コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ヒーリングKISS(仮……かもしれない←) ( No.9 )
- 日時: 2013/07/29 22:00
- 名前: ぴんくのうさぎ ◆v8I1Bhr5SU (ID: m3TMUfpp)
今回は長めですw
多分、だいたい誰がどういう人物、という事が分かると思います。
ちなみに私が一日に何度も(と言っても2回ですがw)投稿するのって珍しいんですよ!←
……あ、どうでもいいですね、すみません。
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#02話 「殺人鬼と黒蝶の出会い」
路地裏を出るアレン。
何事もなかったかのように広場へと出た。
「……次はメラノ町辺りに行くか……」
地図を広げてぼそっと呟く。そして地図を閉じてそれを異空間へと転送した。
行き先は彼の持ち物欄の中。また取り出す事も勿論可能だ。
地図をしまったのを確認すると、そのまま広場を真っ直ぐ進むアレン。すると、大きな人だかりに気づいた。
「……邪魔だな」
人だかりの中心などには興味はない。
アレンはただここを突っ切って行きたかったのである。
しかし、人だかりは減るどころか大きく膨らんでいく。
「……まぁ、数人ぐらい構わないか」
アレンは剣の柄に再び手を伸ばした。
一方、人だかりの中心では一人の少女が沢山のヒトに剣やら槍やらを向けられていた。
「……お前、例の"黒蝶"なんだろ?」
「こんなところでレア生物に会えるとはな」
「……ちょっと、"黒蝶"を殺るのは私よ!?」
数々の怒号が飛び交う。少女は何も言わずに俯いていた。
(……また…………バレてしまった……)
半ば絶望的に周りを見渡す。沢山の目が自分に向けられていた。
……自分を殺すために。
(こんなところで魔術を使ったら、多分町ごと吹き飛んでしまう。といっても武器は短剣だけ。いくら私でも、短剣1本でこれだけの大人数をさばける自信はない。一体どうすれば……)
無意識に拳を握り締める。
(……黒蝶?レア生物?そんなの全然嬉しくない。嬉しいわけがない。殺されるために生まれてきた存在なんて生きる意味がない。……私だって、私だって、普通のヒトの様になりたかった。友達を作って、一緒に遊んで、戦って……。どうして私は……)
知らぬ間に目から涙がこぼれる。小さな雫はアスファルトに吸い込まれるように消えた。
その瞬間、人だかりの隅の方から悲鳴のようなものが響いた。
「……えっ」
思わず声のした方を見る。
周りのヒト達も不思議そうな顔でそちらを眺めた。
……ヒトが飛んでいた。いや、宙を舞っていた。どれも皆恐怖で顔を歪め、悲鳴を上げながら。
——何か恐ろしいものがこっちに向かっている。
少女はそれを瞬間的に悟った。
よく見ると、誰かが剣を振り、その度にヒトがふっ飛んでいるようだ。
ついに一番先頭にいたヒトが宙を舞う。
『誰か』の姿が明らかになった。
「邪魔だ」
その声は思わずその場に凍りついてしまいそうなほど冷たく、恐ろしかった。
黒い髪、黒い目、黒いコート。そして右手に握る漆黒の剣。
少女は噂で聞いたことがあった。
『闇の殺人鬼』というものが存在するということを——。
(……まさか……)
次の瞬間、凍りついた空気が一瞬で解凍された。
「……闇の……『闇の殺人鬼』だ!」
「逃げろぉぉおおお!!!!!!」
「嫌、まだ死にたくないいいぃいい!!!!!!」
広場を悲鳴が埋め尽くす。少女の周りの人だかりは一瞬にして消え去った。
しかし、少女は安心していなかった。逆に、さきほどより状況が悪化したと感じたのだ。
……『闇の殺人鬼』。それを知らない者は、今この世界にはいないだろう。
数年前、彼はある強大なギルドを一人で全滅させたのだ。その直後には村までをも。
感情のこもっていない冷たい目で人を殺す姿に、人々は恐れおののいたそうだ。
(……もしかして、この人も私を殺しに……?)
そう、少女は、この人物も自分を殺しに来た中の一人だと思ったのだ。
……そして少女はついに決心した。私はこのヒトに殺されるのだと。
観念して目を瞑り、時を待った。体中が震えている。
(これで……これで全て終わるのよ。『黒蝶』として狙われることもない。逆にこの方が良かったのかもしれない。今までの私は、きっと、死ぬのが怖かったんだ)
少女の耳は、近づいてくる足音を敏感に感じとっていた。
……あと1メートル。
(……ッッ!)
あと50cm。体中がこわばった。
(……あれ……?)
……ところが。
おかしい。何も起きないのだ。しばらく経って、少女は恐る恐る目を開けた。
前には誰もいない。やはり少女とその『闇の殺人鬼』はすれ違っていたのだ。
でも少女の体には何も起きていない。
後ろを振り返る。すると、少し先の方にその人物はいた。
(……え?)
少女は考えるより先に行動していた。
「ちょ、ちょっと待って!」
駆け寄って腕を掴む。
(……って、ええ!?私、なんてことを!?)
時すでに遅し、とはこのことで。相手の動きが止まった。
「な……」
相手が振り返る。
「……ごっ、ごめんなさ……。……っっ!!」
少女は驚いた。てっきり、さっきのような冷たい顔をしているのかと思っていたのだ。
……でも、違った。
それは、しっかり見なければ分からないようなことかもしれない。
普通なら見落とすようなことなのかもしれない。
それでも、少女はハッキリと気付いた。
少年の目が
とても寂しそうな色をしていたということに。