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Re: 私は臨時ドS執事に一目惚れをした。 ( No.19 )
日時: 2013/08/02 17:53
名前: 莉遠 ◆gX.y9FxA6g (ID: gYu/uyWc)

第5話『・・・土方。』


木戸:土方くん・・・いや、土方リクくんは彼が幼いとき、旦那様が助けた孤児でございます。

神奈:え?土方が孤児?

木戸:ここからは私めも100%知っているわけではございません。私の想像も交えてお話するのでご了承を・・・



土方リク・・・22歳。性格はドSで腹黒い、けどとても優しい(?)好青年である。

だが彼の人生はあまり幸せな方ではない。彼は実は人身売買で「もの」として取引された不運な子なのである。

その人身売買はとある企業が裏でやっていたことであり、勿論違法。その企業が神奈の父の会社に取引を持ち出したのである。当然神奈の父はただの社長じゃなく、スーパー社長であり、頭もキレる。逆にその企業の不正を見つけ、社長などの上層部の検挙に一役買ったのである。



そしてその時、ちょうど人身売買されたばかりで買われたはいいがどこにも売られていなかった約3歳の薄汚い少年がいた。




それが土方リクである。




神奈の父:少年。そこの薄汚い少年。名前は何という?

?:・・・土方。

神奈の父:違うぞ少年。俺はそんなこと聞いているのではない。それは苗字だ。君の名前を知りたい。

土方:・・・・・・知らない。俺の父さんも母さんも僕のことを名前で呼ばなかった。2人は土方さんって呼ばれてた。だから俺も土方。

神奈の父:お前・・・名もつけてもらわなかったのか。


神奈の父は土方の目線に合わせるために膝をついた。そして土方の頭に手を置き、髪をクシャクシャした。


土方:何するの?くすぐったいんだけど・・・

神奈の父:かわいそうにな。こんな時はにっこり大声で笑うのが子供ってもんだ。俺が君くらいの歳にはいつも笑って遊んでたよ。境遇が少し違うと全く違う道を歩んでしまうものなのだな。

土方:さっきから何言ってるの?難しくてわからないよ。

神奈の父:ああ、少年には難しい話だったな。悪い。


と言って神奈の父は立ち上がってその場から立ち去ろうとした。そしてこう言った。


神奈の父:少年、俺は君を買うことに決めたぞ。俺の家の執事として育ててやることをな。まあどうするかは君次第だ。ここで俺についてくるのもいい。ついてこないのもいい。だがもし君が付いてきた暁には・・・君に名前をくれてやる。



そして神奈の父は歩き出した。正直土方少年には難しいことだった。だが、付いて行くべきだと子供ながら察知したのだろう。神奈の父の後をついてきた。



神奈の父:いい子だ。君の名前は・・・そうだな。どんな境遇であれきちんと地に足をつき堅実に生きてほしいから・・・リク(陸)だ。君の名前は今日から土方リクだ。

リク:土方・・・リク・・・

神奈の父:そうだ。私は最近結婚してね、もし子供が生まれたら君に任せたいものだよ。







木戸:それから土方くんは不妊症で悩まされていた当時の旦那様のメイドの手で育てられたのでございます。

神奈:・・・ちょっと、ドラマみたいで展開についていけないんだけど。リクって名前・・・お父さんが名前をつけたんだ。


正直こんな話、同情せざるを得ない。不当人身売買で売られたことも、3歳になっても親から名前をもらっていなかったことも。


木戸:土方君はとても優秀でありましてね、無事に今年に大学を卒業して、晴れて職業が執事と言える身になったわけです。

神奈:・・・・・・鈴蘭さんは?

木戸:それは本人に聞けばいいのでは?実際に会って・・・ね。


こんな壮絶な過去があって今よく飄々と生きているなと思った。普通暗くなったりグレたりするのだろう。まあ性格は捻じ曲がっているがとても余裕がある立ち振る舞いをしている。一体どうやって子供時代を過ごしてきたのだろうか。


神奈:アイツが言った無礼なことはぶっちゃけ許せないわ。だけど・・・もうちょっと彼のことを知りたくなった・・・かも。どこに行ったのかな?

木戸:恋ですね、お嬢様。

神奈:ち、ちちち違うって!

木戸:え〜っと、多分彼らはあそこへ行っていることでしょう。

神奈:あそこ?土方の家?

木戸:いいえ、おそらくそこへはまだ行かれていないでしょう。おそらく・・・・・・








続く