コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 私は臨時ドS執事に一目惚れをした。 ( No.40 )
日時: 2013/08/22 23:30
名前: 莉遠 ◆gX.y9FxA6g (ID: 5K27D2Vq)

最終話『やはりお嬢様は馬鹿でございますね』


木戸:ただいま戻りました、お嬢様。私がいなかった間に何か不祥事はありませんでしたか?

神奈:あったもんじゃないわよ。土方がこの2週間、私をさんざんいじめやがったのよ。全く・・・

木戸:そうでございますか。土方くんと一目会いたいものですが・・・彼はどこにいるかおわかりになりますか?


今日は木戸が帰ってくる日。つまり、土方リクと真田鈴蘭が屋敷から出て行く日である。朝から何があったわけでもなく、普通に時が過ぎ、夕方になった。そして木戸が帰ってきたのである。


神奈:土方〜。土方〜、木戸が会いたいって言ってるわよ。ちょっと聞いてんの?


といって土方が寝泊まりしていた部屋を開けたがそこには誰もいなかった。それどころか土方が持ってきていた荷物もすべてなかった。


その後、鈴蘭の部屋にも行ったが同様に何もなかった。



神奈:うそ・・・2人ともどこ行っちゃったの?

木戸:お2方・・・ひょっとしてもう出て行かれてしまったのかもしれませんね。

神奈:え?だって私、まだ2人に何も挨拶もされてないよ!

木戸:いや、土方くんも真田さんもとてもシャイですからね・・・。別れの言葉を告げるのが恥ずかしかったんじゃないのでしょうか。

神奈:シャイ・・・あの2人が・・・。


そういう風に考えたことなかった。だが・・・あのドS2人組がシャイだと考えると・・・笑えてくる。

だけど・・・何もなしでお別れなんてやっぱりいやだ。だって私・・・


木戸:彼らはおそらく、今から旦那様のいらっしゃるシンガポールへいくために飛行機に乗ることでしょう。車、出しましょうか?

神奈:・・・・・・帰ってきて早々だけどお願い、木戸。






リク:もうすぐ乗りますよ鈴蘭さん。準備はいいですか?

鈴蘭:よかったの?

リク:何がですか?

鈴蘭:お嬢様に・・・会わなくても。

リク:ああ、かまいませんよ。お嬢様にも申し上げましたが湿っぽい別れは嫌いなのですよ。


相変わらずいつもニコニコしているドSなイケメン土方リクといつも無表情のクールビューティ真田鈴蘭が木戸の言うとおり空港にいた。


リク:それに、きっとまた会うときがくるでしょう。そのときは、あなたも一緒でしょう?

鈴蘭:・・・・・・うん。

リク:ではいきましょうか。






“待ちなさいよ!”





女の子の声がした。その女の子は常人じゃあり得ないくらいの豪華なドレスを着ている高校生くらいの女の子。ドレス姿で走ってきたため、息が少しあがっているようにみえる。



紛れもない。世界的大企業の社長令嬢、スーパーお嬢様の織田神奈だ。




リク:お嬢様、どうしてこちらに?

神奈:それは・・・それはこっちの台詞だっつーの!私に何も言わずに出て行こうなんて・・・いい度胸じゃないのよ。


言いたいことはいっぱいある。ドSだったが彼に恋をした。恋をしたことで毎日が楽しかった。いじめてきたけど彼は私にいっぱい尽くしてくれた。だけど・・・何から言えばいいかわからなかった。


リク:お嬢様も物好きですね。一執事にここまでしてくださるとは・・・本当にありがたき幸せ。


リクは笑った。それはいつものようなサド色に染まった少し不気味な笑みではなかった。優しさいっぱいのきれいな笑顔だった。


その笑顔に神奈はドキドキしてしまった。


次・・・いつ会えるかわからない。彼は私の気持ちを知っているけど・・・言うなら今しかない。



神奈:土方・・・私・・・!

リク:ストップです、お嬢様。


リクは神奈の口に指をそっとおいた。


リク:それ以上はダメでございますよ。

神奈:え・・・

リク:私とお嬢様は所詮執事と主の関係。どう足掻いてもお嬢様の望むようなことにはなりません。

神奈:・・・・・・そうよね。

リク:だから続きは・・・



リクは顔を神奈に近づけた。すごく近い距離で神奈はすごいドキドキした。



リク:お嬢様が奥様と呼ばれるようなお方になったとき、その続きを聞かせてくれませんか?

神奈:でも・・・・・・

リク:お嬢様、やはりお嬢様は馬鹿でございますね。

神奈:な、何を・・・!!

リク:お嬢様と呼ばれるようじゃ私は一生執事として付き合わなければなりません。つまり、結果はどうあれ今のお嬢様ではその先を言う資格もなければ権利もありません。

神奈:そこまで言うか!

リク:あれ?お嬢様は一生進化しないでいるんですか?一生Lv.1ですか?一生お子様ですか?一生クソガキですか?

神奈:んなわけないでしょ!次会うまでにパワーアップしてやるわよ。誰がどう見ても素敵な淑女になってやろうじゃないの!

リク:楽しみにしています。では、いきますよ、鈴蘭。




そうして2人は旅立っていった。









鈴蘭:ねぇ、もしあのまま告白受けてたら・・・受理してた?

リク:いえいえ・・・どうでしょうね。








そして臨時ドS執事はいつものように不気味な笑みを浮かべた。