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Re: 【逆ハー万歳!】貴方に愛されたい僕とハナミズキ。 ( No.1 )
日時: 2013/07/28 22:34
名前: 夕紀 ◆8HAMY6FOAU (ID: ymYDaoPE)

1.


この街は、平和だ。

少しだけ都会から離れたこの街は、
花や木々が綺麗に咲き乱れている自然溢れた街だ。
海も近くにあり、青いコバルトブルーの海の色があたしは好きだ。

「うしょ……んっしょ!」

階段の多いこの街で、トランク一つという大荷物を持って上に向かって歩くというのは大変だ。
今、現在進行形で大変だ。

「もぅ〜……隆弘は何故来ないんだ?!」

迎えにくると言った従姉妹に悪態をつきながら、あたしは一生懸命に階段を登って行った。



階段を登り続けて15分。
やっと目的地である家についた。

「いや……てか、家というか洋館じゃね?」

地図と場所を照らし合わせながらあたしは困惑していた。
目の前にたたずんでいるのは、家というより旧制の洋館のようだった。

薄い青色をベースに白の窓淵はとてもおしゃれだ。
塀には色とりどりの薔薇が巻きつき、どことなく怪しい雰囲気をだしていた。
あたりにはほかの家はなく、森が生い茂っているだけだ。

「うわぁ……雰囲気あるなぁ……」

あたしはこんな大きい家に住むのか、と思うと少しわくわくする。
取り敢えず、インターホンを鳴らすことにしよう。
と、あたしは両開きの扉の前に立って、横に兼ね備えていたインターホンのボタンを押した。

『はーい!どちらさんっすかー?』

インターホンから聞こえてきた声には聞き覚えがあった。

「……隆弘?」
『え……?え、ちょ!!もしかして、いっちゃん?!わっ、待って待って!!』

驚いた声とドタドタと走る音が聞こえたと思ったら、突然扉が開いた。
そこには、2年前と変わらぬ姿で笑うあたしの従姉妹の藍田 隆弘が立っていた。

「わー!!いっちゃん!久しぶりだね、いっちゃん全然変わってない!!」
「うごごごっ!!た、隆弘っ!!」

そう言うのと同時に昔のようにあたしの首に腕を巻きつけ抱きしめる。
突然の隆弘の行動に、あたしは不覚にも顔を真っ赤にさせて必死にバタバタと抵抗をした。

「あはっ、ごめんごめん。いっちゃんに会えたのが嬉しくてさ、俺!」

隆弘が太陽のように笑いながら言う。
そんな隆弘の笑顔があたしは大好きだ。

「取り敢えず上がってよ!おばあちゃんも待ってるから!」
「あ、わかった……って、お前。迎えにくるって言ったくせに来なかったじゃないか!!」
「え?」

キョトンとした顔をして、しばし考えるように上を向いた隆弘はぽんっとこぶしを片手に置いた。

「忘れてた!」
「あたしは、あんたに荷物を持たせて行こうと輸送を頼まなかったのに……」

ごめんごめん、と全く反省しないような声で言った隆弘を人睨みして、隆弘の案内のもとおばあさまが待つ部屋に向かった。