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Re: 【逆ハー万歳!】貴方に愛されたい僕とハナミズキ。 ( No.5 )
日時: 2013/07/28 23:09
名前: 夕紀 ◆8HAMY6FOAU (ID: ymYDaoPE)

5.



「美味しかったぁ……やっぱ、隆弘は料理美味いよなぁ……」
「まぁね、これだけは自信あるかな」

あたしが褒めると、隆弘は恥ずかしそうに頬を染めてはにかんだ。
リビングの大きいテーブルに座って隆弘の作ったオムライスを食べた。
ふわふわとろとろの卵がケチャップライスの上にのっていて、その卵にはケチャップで薔薇の絵がかけられている。

いや、こいつメッチャ器用すぎる……!

なんて、感動しながら食べた。
勿論、ちゃんと美味しかった。ふわとろオムライス……。

「隆弘……おかわり」
「まだ食べるの?!」

目の前の席に座っている奈内くんは3皿ほどおかわりをつづけている。
見かけによらず大食いだった。

「……あ。おばあさま」
「え?」

その時、スプーンを加えたままの奈内くんがドアのほうを振り返った。
あたしもつられて振り返る。

「美味しそうな匂いに誘われてしまったわ。……隆弘くん。私にも作ってくださるかしら?」
「あっ、はい!ただいま!」

奈内くんのおかわりをキッチンで作っている隆弘は大きな声で返事をした。

おばあさまは車椅子で席に移動する。
一つだけ椅子のない部分がおばあさまの定位置らしい。

「未來、樹ちゃんに自己紹介をしたかしら」
「はい……しました」
「あら、そう」

クスクスと笑うおばあさま。奈内くんは無表情だ。
さっきから全然表情が見れない奈内くん。だけど、おばあさまを見つめるあの綺麗な瞳はとても優しかった。





「樹ちゃん。制服のことなんだけどね」
「あ、はい」

おばあさまが突然切り出した話題は、高校の制服のことだ。
あたしは特別枠としてここの高校へ受験したから、人より合否の発表が遅かった。無事に合格はしたのだけど、合格するまで制服をたのめなかったから人より注文が遅れたのだ。
春休みが終わる頃にはできる予定と呉服屋さんは言っていた。

「あれ、できたみたいなの」
「そうなんですか」

早いな。もう、できてしまったのか。

「それでね明日でもいいから、ちょっと着てみてくれないかって先ほど電話がきてね……」
「あ、はい。分かりました」
「あ!はいはい!俺が呉服屋さんまで案内しまーす!」

と、そこで隆弘が元気良く手をあげた。
おばあさまは隆弘を見つめてからクスリと笑い、何か忘れているんでなくて?、と言った。

「え……っと?…………あっ!!約束があったぁぁぁあぁあ!!」

心底残念そうに床に膝をついて、隆弘は嘆いた。
あたしはそれを無視してカフェオレを啜る。

「でも、隆弘くんが行けないとなると……」
「あ、大丈夫ですよ。地図とかくれれば一人でも……」

そう、あたしが言いかけた時だった。

「じゃあ……僕、行く?」
「……え?」

思いも寄らない申し出にあたしはしばらく呆然としていた。