コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.1 )
- 日時: 2013/08/08 14:00
- 名前: 和泉 (ID: ZFblzpHM)
#1 「どうも、長男です 上」
蝉がうるさい。
みんみん通り越してもうすでにジャージャーとしか聞こえない。
いっぺん黙れ!!と叫んでみたいが、蝉相手に本気で叫んだら、明らかに夏の暑さで頭をやられたかわいそうなやつという目線を向けられることは明白なので、部屋の窓を閉めてこらえてみる。
俺の名前は藤沢ナツ。
名前がナツだから夏が好きなんでしょ、とかいうやつが多いが、それは多大なる誤解である。
俺は、夏が、大っ嫌いだ。
「あー、暑い暑い」
言いながら夏休みの宿題と格闘すべく勉強机に向かった時だった。
ごんごんごんごんごんごん!!!!!!
もはやノックの音を通り越した勢いでドアが叩かれた。
いったいなんだと恐る恐るドアを開けてみる、と。
そこには鬼が立っていた。
——もとい、鬼のような顔をした、次女、リカが立っていた。
「お、おう。リカどうした。顔が、顔がすごいことになってるぞ」
「ナツ兄、私今年高校受験なんだけど。」
「知ってるよ、頑張ってるもんな、兄ちゃんはよーくお前の頑張りを知ってるよ。
よし、冷凍ミカン食うか」
「冷凍ミカンも冷凍バナナもどうでもいい。
どうでもいいから、こいつらを預かって」
凍えるような無表情と冷たい声で、リカは俺の部屋に子供を二人突っ込んだ。え、と停止した俺の脚に、二人がすがりついてくる。
「・・・お前らどうした」
藤沢家末っ子の双子、アヤとヒロだった。
藤沢家は四兄妹である。
長男が高2の俺、ナツ。
長女が現在中三のリカ。
次女、次男が五歳のアヤとヒロである。
そして、そんな末っ子二人組はというと。
「リカ姉がどなったぁ〜」
「リカ姉が怒ったぁ〜」
俺の脚に縋り付いたままぎゃんぎゃん泣きわめいている。
やめてくれ、おいヒロジーパンに鼻水つけんな。
そしてリカはというと激しく冷たい視線を二人に向け、
「黙んなさいよ。あんたらが遊べ遊べうっさいのが悪いんでしょ。
その口米で引っ付けてやろうか」
脅しが怖くないですよ、お姉さん。
なんて思いながらリカを見ていたら、リカが双子に優しく声をかけた。
「私は勉強する、遊びたいならそこの暇人に頼みなさい」
「え、俺別に暇じゃ…」
「そこの暇人に遊んでもらいなさい」
「はーい、暇人でーす」
やだもう、うちの長女怖い。
ばたん、と音を立てて部屋を出て行ったリカを見送って、俺は双子に声をかけた。
「よし、ヒロ、アヤ。
兄ちゃんと遊ぶかー」
『やだ、リカ姉がいい』
……、俺、そろそろ泣いてもいいですか。