コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.102 )
- 日時: 2013/08/26 23:48
- 名前: 和泉 (ID: mt9AeZa7)
♯39 「次女と星空と思い出とヒーロー 2」
藤沢リカ、とその女の子は名乗った。
私たちは迷うことなく、彼女について歩き出した。
そしてついたのはきれいなおうち。
リカちゃんはそのおうちのドアを開け、私たちを突っ込むと叫んだ。
「ナツ兄!!お風呂空いてる!?」
すると、奥の扉からひとりの男の子が顔を出した。
「おうリカ、お帰り。塾お疲れさん。
空いてるけどどうした……、どうしたんだそれ!?」
男の子は私たちが視界に入ったらしい。
思いっきり叫んだ。
そして、そんな彼にリカちゃんは一言。
「拾った」
「そんな犬猫拾ったみたいに言うんじゃねぇぇぇぇぇ!!!!」
男の子がまたもや叫ぶ。
忙しい人だ。
「え、なに。お前何してんの!?」
「拾ったのよ、そのまんま。
長い間外にいて体が冷えきってる。
早くお風呂にいれてあげて」
男の子はその一言で顔色を変えた。
そして私たちにかけよると、大きな手でヒロの頬を触った。
そして顔をしかめた。
「いろいろリカには説教含め言わなきゃいけないことがあるけど、後だ。
こいつら風呂にいれてくる。
その間にお前は母さんと父さんにこいつら連れてきた理由を説明して、
今後の相談始めてこい」
「了解。………ナツ兄、ごめん」
リカちゃんがうつむく。
なんにも考えずに私たちはリカちゃんについてきた。
でも、リカちゃんに迷惑をかけているだけなのかな。
私たちまで悲しくなってうつむくと、
男の子はくしゃりとリカちゃんの頭を撫でた。
「なんか理由があったんだろ。
わかってるから謝るな。
この子達は俺に預けて、相談してこい。」
大丈夫だから。
そう言って笑って、男の子は私たちを洗面所に連れていった。
「俺は、ナツ。
藤沢ナツ。リカの兄ちゃんだ。
お前らに怖いことはなんにもしない。
約束するから、服脱いで風呂につかってこい。
俺はあとから一緒にはいる」
そういって、ナツくんは洗面所から出ていった。
ナツくんの言う通り、服を脱いで浴槽に浸かる。
あったかくて、なんだか泣きそうになってしまった。
そのあとお風呂に入ってきたナツくんは、私の腕のあざを見て顔をしかめた。
「これは、どうしたの?」
「突き飛ばされたの」
「誰に?」
「ひまわりの家の、おねーちゃん」
「ひまわりの家……?
お前ら、隣街からここまで歩いたのか!?」
ナツくんがびっくりしたのかまた叫んだ。
よくわからないけど、うなずく。
「にげてきたの」
ヒロがナツくんを見上げて、そっと言った。
「あそこにいたらだめなの。
アヤは、あそこにいたらだめなんだよ」
「どうしてだめなの?」
ナツくんが尋ねる。
ヒロはちいさな声でこう言った。
「アヤ、泣くから。悲しい顔しかしないから。
ぼくもかなしくなるの」
ぽん、ぽんとナツくんが私たちの頭を撫でた。
そしてナツくんは一言だけ、こう言った。
「もう大丈夫だから」
それからナツくんは、口を開こうとしなかった。