コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.108 )
- 日時: 2013/08/30 22:16
- 名前: 和泉 (ID: kI4KFa7C)
♯44 「長男と藤沢家の次女救出大作戦 3」
女性の話を聞き終えて、俺とリカは自転車をこいで帰路をたどった。
「これではっきりしたな」
「何が」
自転車をこぎながら、リカに言う。
「犯人の目的。
犯人は立花紫乃で間違いない。
はっきりしたのは立花紫乃がなんでアヤをさらったのかと、アヤに身の危険があるかどうか」
そういうと、
「ざっくり言うと、アヤが傷つけられたり殺されたりする可能性は皆無ね」
リカが静かに言った。
「そして計画性も皆無だわ」
立花紫乃がアヤを捨てた理由。
そこから導きだされた答えは、立花紫乃はもとから計画を練って
アヤを誘拐したわけじゃなかったということ。
立花紫乃はほんとうに、遠目からアヤを見るだけでよかったし、そのつもりだったのだろう。
突発的にやってしまった誘拐、それが一番しっくり来る。
「大人って、勝手ね」
大人って勝手だわ。
自分に納得させるようにリカが繰り返した。
「捨てたくせに、愛してるなんて」
ただの独りよがりよ。
呟いた言葉は、夜の闇に溶けて沈んだ。
家について中にはいると、父さんがもう家に着いていたらしい。
ひょっこりとキッチンから顔を覗かせた。
「お帰り父さん。浩二と佐々木は?」
「ただいま。あの二人ならさっき帰ったよ」
帰ったのか、そう考えながらうなずいて返すと、リビングのソファに横たわっていた母さんも体を起こした。
「母さん!?無茶すんなよ、寝てろって!」
慌てて駆け寄ると、
「娘の一大事にのんきに寝てられる母親なんかいないわ。
なっちゃん、なにかわかった?」
いつものふわふわさもかききえた静かな声で、母さんが問うた。
目が完全に据わっている。
そのようすに若干怯えながら、俺はそれに淡々と答えた。
「おそらく犯人の名前は立花紫乃。
アヤの実の母親。
住所と電話番号もわかった。
誘拐した理由は—————」
ひまわりの家でわかったこと。
全てを語り終えて、母さんと父さんを見る。
母さんの顔はひどく歪んでいて、父さんの顔も似たようなものだった。
「そうね、じゃあかなめくん。車を出してくれる?」
聞き終えた母さんは、静かな声のまま父さんに指示を出した。
「了解」
父さんがぱっと立ち上がってガレージへとかけていく。
「なっちゃんは悪いけど、私の車イスを持ってきてもらえるー?
りっちゃんは、家の戸締まり。
立花紫乃さんの家まで、案内よろしくね」
「え、」
何をする気だ。
硬直して母さんを見ると、
「みんなで、アヤを迎えにいきましょう」
ずいぶんとお世話になったようだから。
そう言って、母さんがふわりと微笑んだ。
その姿に、俺とリカは息を飲む。
やばい、母さんがキレているぞ、と。