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Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.14 )
日時: 2013/08/08 20:58
名前: 和泉 (ID: VOLiE0.8)  


♯6「長男とふわふわマザー」


「ナツ兄ー。ナツ兄ー。夕飯なーにー?」

「なーにー?」


双子がわいわいと騒いでいる。
俺は卵を焼きながら、そんな二人に声をかけた。


「暑いから冷麺!!
野菜しっかり食えよー」

『わーい!!冷麺!!』


ヒロとアヤが足にまとわりついてくる。
夕飯作ってるときは来んなっていってんのに、学習しないやつらだ。

でも、今リカは塾で自習中。父さんはまだ仕事から帰ってきていない。

母さんは、きっとまだ寝ている。

寂しいんだろうなってことはわかるから、やりたいようにやらせておく。
包丁に触ろうと背伸びしたときはさすがに怒鳴ったが。


ゆでた麺の上に野菜をがっつりのせて、テーブルにセッティングしてから、母さんの様子を見に行くためエプロンをはずした。
ヒロとアヤが心配そうにこちらを見る。
それに小さく、大丈夫だよと笑って見せた。



自宅の二階の一番奥の部屋。
ノックして、母さんが起きているか確認する。

「母さん?」

いつもは大体返事なんて帰ってこない。
でも、今日は違った。

「あら〜、なっちゃん?」

ふわふわとした声が聞こえた。母さんの声だ。
そっとドアを開けてみた。

するとベッドから体を起こして、ゆったりと伸びをしている母さんと目があった。

「おはよう、なっちゃん」

ふわふわと母が笑う。
今日は随分と顔色がいい。
「もう夕方だよ、母さん」

「あらあら大変。寝坊しちゃったわね」

「寝坊とか言うレベルじゃないし、むしろお願いだから寝てて。
夕飯冷麺作ったけど食べれる?」

「あらあら大丈夫よぉ、そんな病人みたいに扱わなくても。
食べれるわ〜」

いや、あんた病人だから。
自宅療養許されただけの病人だから!!

叫ばない俺はずいぶんと大人になった。

しかし母さんはふわふわと笑いながら続ける。

「ふふ、冷麺かー。なっちゃん、きっといいお嫁さんになるわね〜」

「俺お婿さんになりたーい」
「きっといいおばあちゃんになれるわ〜」

「うん、お願いだから性別変えないで?」

「大丈夫よぉ、なっちゃんかわいいものー」

「ああなんだろうこの会話のつながらない感じ!!」



すさまじい電波っぷりである。俺涙目。


母さんは、もとから体が弱かった。
とうとう風をこじらせたのが原因で、二年前の冬、母さんは入院した。
去年の春に退院し、それから一年、ずっと自宅療養だ。

母さんの体調を気遣って、ヒロとアヤはあまり母親の部屋にはいかない。
幼いながらに気づいてるんだと思う。

母さんの、異常なまでの細さに。