コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.141 )
- 日時: 2013/12/19 21:18
- 名前: 和泉 (ID: AzAx2/ma)
♯64 「合格点ぐらいはあげようかな」
リカの同級生である日下部の話を聞き終えた俺、ナツはゆっくりと立ち上がった。
そして、屋上に寝転がっている日下部を見下ろす。
「65点。ギリギリ合格。今後の成長に期待」
「は?」
わけがわからない。
そう言いたげに体を起こした日下部の頭を、俺は思いきりぐしゃぐしゃと撫でた。
「リカの婿候補ぐらいには認めてやるよ。
俺の妹をやるにはまだ値しないけどな」
そこは今後の成長に期待ってことで。
そう言うと、目を瞬かせた日下部は呆然と呟いた。
「それ、俺のこと応援してくれるってことですか?」
「誰が応援なんかするか。
認めてやるっていってるだけ。
とりあえずは黙って見守りに徹するよ」
「…………シスコン」
「なんだとこのガキ」
「痛い痛い痛い痛いナツさん痛い!!」
頭をグリグリしてやると、痛いと喚きながらも日下部は嬉しそうに笑った。
まさかこいつM属性か。
まあ、大事な妹を預けるにはまだ不十分だけれど、こいつが十分リカに惚れてることは確認できた。
きっとリカはこいつとなら幸せになれる。
それは兄の小さな予感と、希望的観測だった。
「血は繋がってないけど、大事な妹なんだ」
「………はい」
「大事にしてやって」
「はい」
兄のわがままな願いを、同級生は静かにうなずいて受け止めた。
ナツさんにグリグリされまくった後、展示の教室に戻ると藤沢さんに遭遇した。
「あ、藤沢さん」
「日下部」
藤沢さんはいつもの無表情に少しの怒気を孕ませて俺のもとに駆け寄ると、
「この変態っ!!」
思いっきり俺に頭突きを食らわした。
なんでこう頭への攻撃が好きなのかなこの兄妹は!!
頭を押さえて唸る俺。
それを見てぽかんと立ちすくむナツさん。
満足げに俺を見下ろす藤沢さん。
「とりあえずはこれで、さっきの事件は不問に処す」
「……ありがたき幸せ」
「そして誓う。あんたの前で二度と油断しない!!
じゃーね、変態。ナツ兄、あたし帰るから」
「お、おう。またあとでな、リカ」
足早に立ち去っていった藤沢さんを見送って、ナツさんが俺に尋ねた。
「リカになにしたのお前」
「なにしたんでしょーね」
「やっぱお前兄として認めらんない」
そう言ってナツさんは、仏頂面で俺に拳骨を落とした。
「痛いんだってば!!手加減してくださいよ!!」
「誰がするかこの変態っ!!」
俺は知らない。
この光景を振り替えって目撃した藤沢さんが
「なんだかあの二人、ほんとの兄弟みたいね」
そう呟いて笑っていたことなんて。