コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.148 )
- 日時: 2013/12/28 20:41
- 名前: 和泉 (ID: F5B8s22.)
♯68「同級生と長女と長男の文化祭」
「…………」
「…………ナツさん、お疲れさまです」
イチコーの校門をくぐって受付を済ませ、二人で一枚ともらったプログラムに俺と藤沢さんは苦笑した。
プログラムにのっていた、ナツさんのクラスの模擬店の紹介文がこちら。
『ナツお兄ちゃんのお菓子のおうち』
『我がクラスの救世主兼アイドル、戦う女子力ことナツくんを中心に作った手作りお菓子を販売しています。
ぜひ一度食べに来てね☆』
「これ、もはや嫌がらせ……」
「ナツ兄の目が最近死んでいたわけが判明したわね。
今朝なんか修行僧みたいな顔で家を出ていったもの。
……家に帰ってきたら指差して笑ってやる」
「藤沢さぁぁぁぁん!!!!
やめてあげて、心の傷をえぐらないで!!」
「何言ってんの、えぐるだけなんてそんな生ぬるいことしないわ。
やるならえぐってからさらにその傷口に塩塗り込むわよ」
「マジ鬼畜です藤沢さん!!」
どうやら俺と一緒に文化祭にいくよう仕組んだナツさんに、藤沢さんはそうとうおかんむりらしい。
くわばらくわばら。
怒れる女王様はプリントを見下ろして深いため息をついている。
「たぶん、浩二さんと佐々木さんあたりの仕業だろうね」
俺がいうと、藤沢さんは綺麗な顔をきゅっとしかめた。
「…………あたし、あの二人苦手」
「え?」
「なんか、怖い」
藤沢さんが誰かを嫌うような発言をするのを、初めて聞いた。驚いて聞き返す。
「なんで?」
「浩二くんは胡散臭い。
小学生の時からそうなの。ナツ兄といるとき、いつも目だけ笑ってない。
なんか企んでる気がする」
「佐々木さんは?」
「落ち着かない。
あの人見てると、なんだか頭の中がざわつく」
だから、苦手。
藤沢さんはそう吐き捨てると、もう一度プログラムに目を落とした。
「ナツお兄ちゃんのお菓子のおうちは後でもいいわよね。
お昼時まで遊ばない?」
話を変えた藤沢さんにそれ以上追求することは諦め、片手をあげて笑って見せた。
「賛成。藤沢さん、どこ行きたい?」
「三年のクラスの“イチコー伝統お化け屋敷“」
「…………ゴメンキコエナカッタナ」
「だから、お化け屋敷」
きっかり三秒、俺は停止した。
「やだよ!!やだやだ、イチコー伝統お化け屋敷って、やたら怖いって有名じゃん!!」
「怖くなくちゃ面白くないじゃない」
「俺心臓弱いから!!」
「じゃあ鍛えるわよ」
「鍛え方を激しく間違えていると思います!!」
「えーと、北校舎3Fっと」
「俺に拒否権は無しですか」
とりあえず、ごーいんぐまいうぇいな藤沢さんに付き添って、イチコー伝統のお化け屋敷へと向かうことにした。