コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.19 )
- 日時: 2013/08/09 07:16
- 名前: 和泉 (ID: cTgMt2qy)
♯8「長女とはやとちりファザー 2」
父さんが、いったいどうして、ここにいる。
A、仕事を終えて帰宅途中だから。
どうしよう、頭の中が若干パニックだ。とりあえず。
「日下部くん、手、放して」
男の子と手を繋ぎっぱなしはまずいだろうと、放してもらうことにした。
「あ、うん」
するりと日下部の手が頬からはなれる。
あたしの左手を掴んでいた右手も、思いの外あっさり外れた。
晴れて自由の身になったあたしが父さんに向き直ると、父さんは何を焦ったのかわたわたと話し出した。
「うちのリカちゃんが、リカちゃんでリカちゃんはリカちゃんだから、えーとっ」
「落ち着いてよ、リカはわかったから」
「お義父さん、深呼吸深呼吸」
ちゃっかり日下部が父さんをお義父さんとか呼んでる。
それにも気がつかないあたしの父。お願い気づいて。
「そ、そうだな深呼吸……って君にお義父さんなどと呼ばれる筋合いはにゃい!!」
かんでどうすんのよ。
それに呆れたあたしと吹き出した日下部。
ますます慌てるマイファザー。
「うちのリカちゃんに手を出すな!!」
「恋愛は個人の自由だと思うんですけどー」
「訂正して、片想いのストーカー。別に私はあんたと恋愛してない」
「リカちゃんは、まだお嫁にはやらん!!」
「父さん、あたしまだ14歳だから。結婚できる年齢じゃないから」
「そうですよ、お義父さん。あとまだ二年ありますから」
「二年後あんたと結婚するなんて誰も言ってないわよ」
あたしの突っ込みも聞こえないほど二人の言い合いはヒートアップ。
いい加減うんざりしてきたそのとき、あたしのケータイが鳴った。
これ幸いと相手も見ずに電話に出ると、聞こえてきたのは。
「りっちゃーん。大丈夫〜?」
三日ぶりに聞く、母さんの声だった。
「母さん?起きてていいの?」
「うん、大丈夫〜。あのね、今日お母さん体調いいからね、久しぶりに夕飯みんなで食べたいなぁって。
今日の夕飯はなっちゃんが作ってくれた冷麺なの!」
何も変わらない、母さんの柔らかな声に、一瞬泣きそうになった。
母さん、母さん母さん。
あたしをたすけてくれたひと。
「りっちゃん今どこー?
あとどのくらいで帰ってこれそうかなぁ?」
「目の前のバカ二人を、あたしが叩きのめせば五分で帰れるわ」
「あら、もしかしてかなめくんがいるのー?」
かなめくん、とは。
言わずもがな大人げないそこのサラリーマンのおっさんである。
やめてよ、なんであたしの小学生のころの話を自慢してんのよ。
だいたい日下部、あんたもむきになるな!!
「うん、その通り。いますぐ連れて帰るわ」
「そうー。殺しちゃダメよ?」
「殺さないわよ。母さんも無茶しないで。」
「母さんは大丈夫〜。じゃあ、待ってるね」
ふわふわとした声が耳元から消えた。
目の前の二人はまだ言い争っている。
今夜は冷麺。ひさしぶりに家族みんなで夕飯だ。
さて、じゃあ五分で帰るとしましょうか。