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こちら藤沢家四兄妹 ( No.3 )
日時: 2013/08/08 14:36
名前: 和泉 (ID: ZFblzpHM)


#2 「どうも、長男です 下」


さて、泣きわめく双子をなだめすかして遊びだした俺たちだったが。

「三分だけまってやる!」

「目が、目がぁぁぁぁぁぁぁ」

「ばるす!!!!」

「ちょっと待てお前ら」

遊びがカオスすぎるだろ。

「それは何の遊びだ?」

『ム●カごっこ!!』

「おう、もう俺はびびらないぞ。
 はい。でアヤは何の役だ?」

突っ込みたい気持ちを抑えて、アヤに問う。
聞かれたアヤはといえば、満面の笑みで

「ムス●1!」

1ってなんだ1って。

「……ヒロは?」

「●スカ2!」

……お前らちょっと待て。

「なんで二人もいるんだよ!あんな悪役一人いりゃ十分だ!!」

しかし、こてんと首を重ねたアヤが俺に問う。

「でもリカ姉がね、【大佐には萌という名の夢が詰まってるんだよ】っていってたよ?」

「リカァァァァァァァァ!?
 五歳児に何教えてんのぉぉぉぉぉ!?」

ダメだ、藤沢家はすでに末期だ!

頭を抱えた俺は、はたと気づいて二人に問う。

「そういや、俺はいったい何役だ?」

まさか飛行機とか言わねえよな。
俺泣くぞ。
そう思いながら双子に尋ねると、双子の答えはさらに斜め上をついていた。

『え、ラピュ●だよ?』

「俺に空飛べと。しかもセリフねえじゃねえか」

こいつら、いったいどうしてくれようか。




夕方も近くなってくると、散々遊び疲れて眠くなったのかアヤとヒロがうとうとしだした。
あんなテンションで騒ぎ倒したら、そりゃ眠くもなるだろう。

「おーい、アヤ—。ヒロ—。寝るのか?」

二人の頭をなでながら聞いてみても、目をこするだけだ。

そろそろ寝るかな、なんて思いながら頭をなで続けていると。
ぽつりとアヤがつぶやいた。

「リカ姉、アヤのこときらいになっちゃったかなぁ?」

ちいさなちいさな、一言だった。

「……どうして?」

「リカ姉、おべんきょー大変なのにいっぱいじゃましちゃったの。
 アヤのこと、きらいになっちゃったかなぁ」

ぽつり、ぽつりとつぶやくアヤの声は、今にも消えてしまいそうだ。
そんなアヤに、俺は疑問をぶつけてみる。

「なんで、お前らそんなにリカに遊んでほしがるんだよ?」

「だって、リカ姉いったもの」



あたしが、あんたたちといつまででも遊んであげるから。

もう、ふたりぼっちじゃないよ。



それはすごく優しくて、悲しい約束だと思った。




「アヤ、起きたらリカにごめんなさいしよう」

目が開かなくなってきたアヤに話しかける。

「うん……」

「兄妹はな、ごめんなさいしたらすぐに仲直りできることいっぱいあるんだよ。兄妹だから、許されることもいっぱいある。
だからごめんなさい、しような。
 それで、次からもうちょい、リカの気持ちも考えてやれ」

うん、とつぶやいたアヤの声はすぐに寝息に変わった。



藤沢家四兄妹には、秘密がある。
みんなが持っていて、守らなきゃいけない秘密がある。



それを話すのは、きっともう少し先になる。


眠ってしまった双子をなでながら、俺は赤い空を見上げた。