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Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.33 )
日時: 2013/08/10 22:02
名前: 和泉 (ID: AzAx2/ma)  


♯16「次男とヒーローと小さな夢」


おれ、ヒロは焦っていた。
リカ姉を、探さなきゃ。


よーし、や、たにん、という言葉はよくわかんなかったけど、それを聞いてリカ姉が泣いたのはわかった。
ナツ兄が呼んでも、アヤが叫んでも、リカ姉は立ち止まることはなく、どこかへ消えてしまった。

だからおれも何も考えずにそのあとを追いかけた。



おれとアヤをふたりぼっちにしないって、約束してくれたリカ姉。
だから、おれもリカ姉をひとりぼっちにしないって決めた。

リカ姉が、ひとりで泣くのはだめだって思った。


ナツ兄が叫んでる。
いくな、だかなんだかわかんないけど、ごめんむり。
水色の浴衣を追いかけて、走る。


「リカ姉。まってよリカ姉!!」


アヤと二人で歩いた夜道を思い出す。
泣き出したアヤ、その手を引いて歩いたおれ。
星がきれいで、いきがまっしろになって。

もう歩けなくなったとき、目の前にリカ姉が立ってた。


あの日から、リカ姉はおれとアヤのヒーローなんだ。

おれも、いつかリカ姉をたすけられるヒーローになるんだ!!



いつのまにか、暗い場所についていた。
突然不安になって立ちすくむ、と。


「放してよばか!!」

「放さない」

「放せっつってんのよ!!」

「今放したら、藤沢さんどっか行くでしょ!!
そしたら一人で泣くんでしょ!?
それがわかってんのに放せるわけねぇよ!!」

「あんたのその中途半端に優しいとこ、大っ嫌い!!」


リカ姉の声がした。

あわてておおきな建物の角を曲がる、と。
ナツ兄と同じくらい背の高い男の人にぎゅーってされてるリカ姉がいた。

リカ姉は嫌だって叫んでる。


たすけなきゃ。
今度はおれが、リカ姉のヒーローになるんだから。


「リカ姉をはなせっっっ!!」

おれは叫んで、男の人にむかって思いっきり体当たりしていった。