コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.34 )
- 日時: 2013/08/11 10:36
- 名前: 和泉 (ID: x6z9HA8r)
♯17「同級生と涙と片思い」
はいはいどーもー。
藤沢家シリーズの中で、一番不憫な扱いを受けてます。
みなさんご存じ日下部音弥です。
いやもう日下部日下部呼ばれすぎて、みんな俺の名前忘れてる気がすんだよね。
オトヤです。
そこそこかっこいい名前もらってんだぞどやぁ。
お願いだからストーカー定着させないでください。
さて、そんな俺、日下部音弥は今日夏祭りに来ていた。
サッカー部の面々と一緒に、受験一直線になる前に最後の思い出を作ろうっていう名目で。
ほんとは藤沢さんを誘いたかったんだけど、
携帯を見てはここ数日そわそわしたり嬉しそうに笑ってたから、きっと先約があるんだろう。
おそらく、「大好きだ」と言って笑ってたお兄ちゃんとか。
まあそんなこんなで夏祭り。
久々にばか騒ぎして楽しんだ。
ただ出店の兄ちゃんやおばちゃんが、
「水色の悪魔が…」とか「金魚すくいのギンがやられたらしい」とか「くわばらくわばら」とか呟いていたのは気になった。
でもなんだか聞かない方がいい気がして、何も聞かなかった。
世の中には知らない方がいいことがある。
しばらくして、俺はジュースを買いにみんなと別行動をとった。
確か境内の裏に自販機があったような、と歩いて暗がりに入ったところで、からんころんと下駄の音が聞こえた。
からん、ころん。からん、ころん。
その音はだんだん大きくなっていく。
なんだ、幽霊か!?
びくりと肩を震わせた瞬間、境内の影から小さな人影が飛び出した。
一瞬硬直して避けられず、人影に正面からぶつかる。
女の子だった。
水色の浴衣に、綺麗な黒髪の。
肩までつかないほどのボブカットをゆらして震えている。
彼女が顔をあげた瞬間、息がつまった。
「藤沢さん………?」
「日下部、くん」
他でもない、それが俺が片思いしている相手の藤沢さんだったからで。
その藤沢さんが涙で綺麗な顔を、ぐしゃぐしゃにしていたからだった。
「泣いてるの!?どうしたの!?」
「な、いて、ない!!」
「いやいや泣いてる泣いてる泣いてるから!!!」
なんでそんなところで強がるの!!
泣き顔を隠そうとしてか、浴衣の袂で顔をぬぐおうとする藤沢さん。
いやいや、せっかく綺麗な浴衣なんだから涙で濡らしちゃダメでしょう。
ぎゅっと藤沢さんの手を握りしめて、顔をのぞきこむ。
泣き顔は、変わらない。
泣かないで。
そんな悲しそうな顔しないでよ。
俺は、君の笑顔が一番好きなんだから。
でも彼女を慰める言葉なんか、今の俺には一言も浮かばなくて。
「ごめん、許して」
俺はそう言って、小さなその体を思いきり抱き締めた。