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- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.37 )
- 日時: 2013/08/11 18:12
- 名前: 和泉 (ID: kDmOxrMt)
♯18「長女と勘違いとあわれなストーカー」
ごめん、許して。
その一言と共にあたしの体はすっぽりと日下部の腕の中におさまった。
停止すること数秒。
状況を理解したとたん、かっと顔に熱が集まった。
ちょっと待て、なにどさくさに紛れて抱き締めてやがるこいつ!!
「放してよばか!!」
「放さない」
「放せっつってんのよ!!」
体をねじって抵抗する。
しかし日下部はびくともしない。
放せ、ともう一度叩きつけるように叫んだその瞬間。
日下部も叫んだ。
「今放したら、藤沢さんどっか行くでしょ!!
そしたら一人で泣くんでしょ!?
それがわかってんのに放せるわけねぇよ!!」
それは言外にあたしをひとりぼっちにしないって、言ってるの?
一生あたしのそばにいられるわけでもないのに。
「あんたのその中途半端に優しいとこ、大っ嫌い!!」
いつか放れる関係なら。
いつか失う好きなんだったら。
お願いだからこれ以上優しくしないで。
そのときだった。
「リカ姉をはなせっっっ!!」
聞きなれた声と共に、小さな体が日下部にぶつかった。
日下部が驚いて口を開ける。
あたしも、びっくりしてぶつかってきた子供をまじまじと見つめて叫んだ。
「え、ヒロ!!!??」
そう、それは紛れもなく。
あたしの弟のヒロだった。
「リカ姉をはなせっっ!!
リカ姉をかえせ、バカ!!」
ぽかん、と口を開いた日下部。
突然の五歳児の襲撃にとまどっているようだ。
お願いだからなんとかしてよ、と目がいっている。
「ヒロ、やめて。
こいつは——————」
ヒロを止めようと慌てて口を開いたとき、
「藤沢くん、あそこ!!」
可愛らしい声と共に、イチコーの制服を着た女の子が現れた。
そのうしろからでてきたのは、アヤを抱き抱えてはしるナツ兄。
「ありがと佐々木!!」
叫んだナツ兄は助走をつけて、
「リカ、ヒロかがめ!!」
そう叫んでアヤを抱いたままジャンプ。
身の危険を感じたあたしは、とっさに緩んでいた日下部の手を振り払って、ヒロの手を引いて地面に伏せた。
その瞬間。
「俺の兄妹に手ぇ出すんじゃねえよっっっっっ!!!!!」
ナツ兄の飛び膝蹴りが、綺麗に日下部をとらえたのだった。
ナツ兄、かっこよく決めてくれたところ申し訳ない。
そいつはあたしの同級生だ。