コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.45 )
- 日時: 2013/08/15 14:37
- 名前: 和泉 (ID: mt9AeZa7)
♯19 「長男と花火とやさしいおもいで」
「ごめん!!
ほんっとごめん!!
てっきりしつこいナンパかと思っちゃって!!」
「謝んなくていいわよ、ナツ兄。
そいつストーカーだから。
むしろ地の果てまで蹴り飛ばせばよかったのに」
「藤沢さぁぁぁぁぁぁん!?
俺被害者!!
藤沢さん慰めてただけなのに、蹴り飛ばされた俺超被害者!!」
「………………はっ」
「藤沢くん、妹さんはずいぶんとクールなんですね」
『リカ姉は我が家の女王さまだから!!』
お分かりだろうか。
上から俺、リカ、日下部くん(リカのクラスメイト)、
リカ、佐々木(俺のクラスメイト)、双子である。
現在神社の境内でお好み焼きを食べながら、また不思議なメンバーで花火を眺めている。
と、いうのも俺が早とちりで日下部くんを蹴り飛ばしたせいなんだけどね。
ごめんね日下部くん。
あのあと。
リカが走り去り、ヒロがそれを追いかけていったあと、
二人を追いかけるべく走り出した俺。
二人が見つからなくて息を切らしていたとき、俺に話しかけてきたのは佐々木だった。
『水色の浴衣の女の子、あっちにいきましたよ。ついてきてください』
そう言って、案内してもらった場所でみたのは、抱き締められるリカと叫ぶヒロの姿。
うん、あとは言わなくてもいいよねごめんなさい。
ただ、ひとつだけ。
水色の浴衣の女の子を探してる、なんて。
俺は佐々木に一言もいった覚えがないことだけがひっかかっていた。
佐々木は、いったいなんなんだろうか。
何を知っているんだろうか。
少しだけ、隣でお好み焼きを頬張っている無表情な学級委員を、怖いと思った俺がいた。
花火大会が中間にはいった頃。
「ねぇ、ナツ兄。
ナツ兄は、あたしたちのことどう思ってる?」
右隣に座っていたリカが静かに尋ねた。
俺はそっと、リカの顔を覗き込む。
「あたしたち、重くない?
あのね、あたしはナツ兄の重荷にはなりたくないの。
絶対に、それだけは嫌よ。」
リカが、小さな声で言う。
俺たちは、血が繋がっていない。
その分だけ、他の兄弟よりも距離がある。
桜が咲いたあの日。
藤沢家が始まったあの日から。
リカはずっと、そんな気持ちを抱えてきたんだろうか。
ずっと、自分を重荷のように考えていたんだろうか。
『消えて、しまいたい。』
小さな小さなリカの泣き声。
あの歩道橋から、リカはまだ進めずにいるんだろうか。
それはすごく、かなしいことだと思った。
「重荷じゃないよ」
ぎゅっと、リカの手を握る。
「大事だよ、なによりも。
それは重荷じゃなくて、力なんだよ」
リカが顔をあげた。
「俺がこの世界で生きていくための、一番大きな力なんだよ」
はらり、と。
またリカの頬を涙が伝った。
「リカがいて、ヒロがいてアヤがいて、涼子さんと要さんがいて。
みんながいるから、俺は毎日頑張れる。
重荷なんかじゃない。
だから泣かなくていいんだ。
怖がらなくて、いいんだよ」
血が繋がっていなくたって、リカはちゃんと俺の妹だから。
一番大きな花火が上がった。
ヒロとアヤが歓声をあげる。
リカの目にはきっと、滲んだ花火が映っているんだろう。
もう逃げないから。
そう小さく呟いた、強がりな妹の手を、俺はもう一度握りしめた。