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Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.58 )
日時: 2013/08/16 14:21
名前: 和泉 (ID: e.d4MXfK)  


♯22 「同級生と長女とデート(らしきもの)」


「ねえ、日下部くん。
今度の土曜日、時間ある?」

塾で、藤沢さんが俺に尋ねた。

………それはいったいどういう意味ですか、藤沢さん。

一瞬硬直した俺に、藤沢さんは動じることなくこう言い放った。

「買い物に付き合ってほしいの。
ほんとは一人で選んだ方がいいんだろうけど、
男の子が欲しがるものとかわかんないし。
だめならいいんだけど」

それはデートですか!?
デートのお誘いだと思ってもいいんですか!?

一気に跳ね上がった思考回路に、
ふとちょっと待てとストップがかかった。

今なんて言った、藤沢さん。


男の子が欲しがるものとかわかんないし。


男の子にプレゼントするんですか藤沢さん!!!

ほぼパニックになり、ぐるぐると頭を回していると、

「落ち着きなさいよストーカー。
ナツ兄の誕生日プレゼントよ、人の話を聞け。」

ばしこん、と頭をはたかれた。
ナツ兄、と言えばナツさん。
柔らかい笑顔で背も高くてかっこいい、藤沢さんのお兄さんだ。

そんなお兄さんは、こないだの夏祭りで俺をナンパだと思い込み、
飛び膝蹴りを喰らわすと言う暴挙に出た。
あんな細いからだから、
なんでこんな力が出るんだと突っ込みたくなるくらい、かなりの威力だった。

痛かった。

藤沢さんの前じゃなかったら号泣してたくらい痛かった。


もちろんそのあと、ナツさんから平謝りされたが、一通り謝罪されたあと。


『あ、でもね。
中途半端な気持ちでうちの妹に手ぇだしたら、飛び膝蹴りじゃすまないからね』

にっこり笑顔でそういわれた。
俺、ほんとに泣こうかと思った。



それ以来、ナツさんは俺の中の要注意人物だ。

そんな人の誕生日プレゼント。
……だめだ、下手なもん選んだら殺られる!!


「来週の日曜日、8月の11日ね。
ナツ兄の誕生日なの。
だから前日にプレゼント買いたくて」

「いいよ」


なんでもいいですよ、この際。
俺は一も二もなくうなずいた。

藤沢さんを好きになって、一年ちょっと。
ようやく頼ってもらえるようになった。
ようやく一緒に出掛けてもらえるようになったんだ。

簡単にはチャンスは手放せない。


………うん、とりあえずお兄さまが喜びそうなものをリサーチしておこう。
うん。