コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.90 )
- 日時: 2013/08/23 17:50
- 名前: 和泉 (ID: 60TA9nBF)
♯35 「長女と赤ずきんと双子」
「赤ずきん、この花畑でお花を摘んで持っていくといいよ」
「わー素敵」
「カ—————ッッットォォォ!!」
教卓から、クラスメイトの一人が叫んだ。
「藤沢さん!!なんでそんなに棒読みなの!?」
「失礼な。あたしの精一杯よ」
「嘘でしょ!?嘘っていってよお願い!!」
「あたし最初に言ったじゃない。
あたしは演技できないわよって」
「だってここまでなんて思わないよ!!」
はい、こんにちは。
藤沢リカです。
あたしはただいま秋の文化祭で演じる赤ずきんの稽古中です。
あたしが何役か?
会話を見たらわかるでしょう。
もちろん赤ずきんです。
まさかの主役です。
ちなみにオオカミをやってるのは誰かと言うと。
「そもそもあたしはこいつがオオカミと言うことが気に入らない」
「ひどいよ藤沢さん」
そう、期待を裏切らず日下部音弥である。
「ああ、私はキャストをミスしたかもしれない…」
あたしの隣でクラス委員兼劇の監督である三好ユキが頭を抱えた。
「他学年にも人気の高いイケメンの日下部と、美少女のリカを主人公に当てれば、人気投票一位かもと思ったのに!!」
打算だらけですね、お嬢さん。
はい、残念でした。
みんなに押されまくって赤ずきんにほぼ強制で決定したあたし。
でもあたしは最初に言った。
下手だよって。
あたしは演技というものが一切できない。
もはや大根役者の域を通り越しているといっても過言ではないくらいだ。
それでもいいからとおしたのはそちらである。
「藤沢さん、気持ちを込めて!!」
「あら、ありがとう」
「わー、もうどうしようかこの一本調子」
文化祭の劇の発表はコンクール形式で、投票で優勝や準優勝が決まる。
だからみんなどうにかして勝とうと必死だ。
あたしや日下部がメインキャストになったのも、票を獲得するためらしい。
だがしかし。
あたしに演技を求めるな、クラスメイトよ。
それからしばらくして、ずっと黙りこんでいた監督のユキが叫んだ。
「決めた!!あたし台本を書き直す!!」
「え」
「リカ、演技しなくていい。
あんたが素のままでやれる赤ずきんをあたしがつくればよかったのよ。
目指せ!!赤ずきんパロディ!!」
それでいいのか監督よ。
「今から台本書き直すから、その間に衣装あわせしててよ。
リカ、お兄さんに衣装借りたんでしょ」
そうだった。
ナツ兄も一昨年中学三年生の時、この中学で赤ずきんをした。
ナツ兄の役がなにか?
もちろん女装して赤ずきん役だ。
そのときの服が残っていると言うので、借りたのだ。
わかったとうなずいて席に戻る。
あの状態のユキは止められない。
ため息をついて衣装の入った紙袋をさがして、固まる。
やばい、家に忘れた。
とりに帰ろうか、どうしようか。
慌てた頭でぐるぐると思考を巡らせていると。
『リカ姉!!!!!!』
聞こえるはずのないものが、聞こえた。
振り替えると、教室のドアの戸口にいたのは。
「アヤちゃん!?ヒロくん!?」
アヤと、ヒロだった。