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Re: 彼女の前世はシンデレラ【イラストあり】 ( No.101 )
日時: 2013/08/26 02:28
名前: 冬の雫 (ID: Uc2gDK.7)

(雨のミニキャライラスト…何故か貼れなかった( ´△`))


■七話■木ノ葉と紅葉


「………ん…」

目が覚めると、そこは辺りが真っ黒な、不思議な空間の中だった。

一瞬何が何だか分からなくて、「どこ…?」と俺は目をこする。


もう一度辺りを見回すと、見れば見るほど本当に真っ黒。

どこもかしこも縁取りなんかされていなくて、地面があるのか空があるのか。それさえも分からなかった。

「どこだよここ…」

記憶をたどって、さっき居た光景を思い出す。

頭に浮かんだのは───真っ白な内装の、保健室だった。


保健室。
淵菜 雨。
小雨。
そして───紅葉。


は、と記憶が戻った。
そうだ、俺は…保健室に居たはずなのに。

「淵菜は…?小雨は?」

そう呟いて、あることに気付いた。

視界の先に、見える真っ白な物体。

「………ひと?」

まるでずっと遠くにあるみたいだ。
白いソレは、多分、人がうずくまっているのだろう。

その“人”に近付くため、足を踏み出した。

ひた、と小さな音が響いて、暗闇の中に消えて行く。

遠くにあると思ったが、意外に近くにその人は居た。

髪の毛も、服も、肌も。

普通の人と比べて明らかに白く、でも男ということだけはわかった。

「…あの…大丈夫ですか…?」

話しかける。
返事はない。

「あの……」

手を伸ばそうとした瞬間。


その人と、目が合った。


「……っ…!?」


驚いた。一瞬息が止まるかと思った。


だってその人は───自分にそっくりだったから。


でも俺と違うのは、その人の髪の毛の色素が異様に薄いことと、大人なこと。

多分俺よりも顔は綺麗に整っている。いや絶対。

もう一度手を伸ばそうとする。

すると、手をいきなり掴まれた。

「…わっ…!?」

そうなると身体は自然にその人の方へと倒れるわけで。

俺は目を瞑って、倒れる覚悟を決めた。


───刹那。



『君は…いまのシンデレラを愛せるかい?』



「……っ!?」

ぱぁっ、と目の前が明るくなった。

目が暗闇に慣れていたため突然の眩しさに、せっかく開けそうになった目をまた閉じてしまう。


『お、目ぇ覚ましたか』


そんな声が聞こえてそろりと目を開けると、そこには、小雨と淵菜が居た。

えっ、と起き上がれば、そこは保健室。

「…なんだったんだ今の……」
『ワケわからねぇこと言うなよ。急に倒れたんだぞ、ガキ』
「うそ…」
『オレ様はウソつかねぇ。…ほら、見ろよ』

小雨が、どこかを指差す。
俺はその指先へ、視線を向けた。

すると、そこには。


『あれが紅葉だよ。お前の前世』


真っ白な服を着た、白い髪の、


暗闇の中であった、あの人が居た。


「この人が…俺の前世……?」


そうだよ。初めましてだね、木ノ葉くん。


そう言って、紅葉は笑った。