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Re: 彼女の前世はシンデレラ【イラストあり】 ( No.130 )
日時: 2013/09/05 00:22
名前: 冬の雫 (ID: SkZASf/Y)

なんか…ずっと放っておいてごめんなさい(´ω`;)

※めっちゃ急展開になっちゃいました(汗
すみません!

■十話■前世の記憶〈1〉


───時は前世。

シンデレラの歌和、シンデレラの王子の紅葉。
白雪姫の雪見ゆきみ、白雪姫の王子の小雨。

この二組のカップルは、王の位といっても町中で絶え間なく慕われていた。


「シンデレラ、好きだよ」
「急に何を…」
「だって好きなんだもん」
「わかったから離れてください!」


「白雪姫」
「はい」
「オレがキスして目を覚ましてやったんだから、オレにキスしろ」
「………はい?」


それぞれ違う恋の仕方で、二組は幸せに暮らしていた。
ただ純粋に、好きという想いが重なり合って。

これで充分だった。


───だがそんなある日のこと、運命が大きく変わり始めた。



「……!?おい、雪見…!?」

白雪姫カップルが、二人で森の中を散歩していると。


───それまで笑っていた雪見が、唐突に、


倒れた。


「雪見…っ!?おい、どうし…、」

「……、こさ、め……」

「雪見!?」

突然のことに混乱する小雨。

森の中は風が低くうねる。

気づいてくれる人など居る筈もなく、小雨は真っ青になって状況を把握できていなかった。

突然すぎて、頭が追いつかない。

雪見は小雨の頬に手をすっと伸ばすと、「…そろそろ、時がきたようです……」と疲れたように笑った。

雪見の伸ばした手が、小雨の頬に触れて、落ちる。

小雨が震えながら「そんなこと言うなよ」と白雪姫の手を掴んだ。
白雪姫の手は…予想以上に、冷たかった。

そして、あることに気付く。

「まさか…、……毒…りんご……!?」


ずっと前に、白雪姫が毒りんごを食べた時。
小人によるとその時も、今のように苦しむこともなく唐突に倒れたらしい。

小雨は雪見が倒れたのは、毒りんごの所為だということを確信した。


“毒の再発”。


それは、全ての人が恐れていたことだった。


「雪見っ!目ぇ覚ませ!帰るぞ!」

必死に雪見を揺さぶる。
だがその白い頬は色づくことはなく、小雨は「くそっ…」と悔しそうに呟いた。

「…大丈夫、落ち着け…。あの時も助かった。オレがキスをしたから。……そうだ、キス…」

ぐるぐると思考を巡らせ、混乱する頭を抑え、答えを引っ張り出す。

───あの時と、同じように。


小雨は、腕の中にいる冷たい雪見に、投げやりに口付けをした。


■◆■


「………おかしいな…」

───その頃、宮殿では。

紅葉が壁に寄りかかったまま、首をひねらせていた。

「…何かあったのかな……?」

「どうしたんですか、王子様」

紅葉が悩んでいると、歌和が紅葉のところへやって来た。
紅葉は「歌和」と零して、「いや、おかしいんだ…」とまた頭を悩ませる。

「? 何がです?」
「小雨と雪見が来ないんだ。予定している会食まであと五分なんだけど…」
「確かにそうですね…」

歌和が持っていた時計をぱかっと開く。
オルゴールの音と共に流れるのは、会食までの時間を知らせる電子音。

「また二人で抜け駆けしているのではありませんか?」
「はは。歌和は面白いことを言うね。小雨ならやりかねないけど」
「きっとそうですよ」

歌和はなだめるように優しく笑った。

だが紅葉は「…でも、心配だよ。ちょっと離れるね」と穏やかな口調で言う。

「……え、」
「会食は延期させて」
「ちょっと待ってください…、紅葉が行くのならわたしも…」
「大丈夫。すぐ戻ってくるよ」

紅葉は笑って、「大丈夫」と歌和の頭を優しく撫でた。

歌和は「……は、ぃ…」と納得いかないように目を伏せて小さく頷く。

「…じゃ、また後でね」

紅葉は歌和の頭から手を離して、歌和の元から離れて行った。


「…紅葉…さん…」


残された歌和は、紅葉の温かい手の感触を忘れないように、目を閉じた。


これが最期になるとは───少しも、思っていなかった。


■◆■


「…ど、うしてだよ…なんで目ぇ覚まさねぇんだよ!?」


闇が近づいてきた、森の中。
白雪姫を抱えて、王子は現実を受け止められずにそう叫んでいた。

「…雪見、お願いだから目を覚ましてくれ……」

まだ脳がついていかない。
なんで雪見は目を閉じたままなんだ?
なんでキスをしても目を覚まさないんだ?

お願いだから、お願いだから。


「死ぬなよ、雪見………っ!!!!」


オレを置いていかないでくれ。







「あの二人、またイチャイチャしてるんだろうな」


紅葉は少し笑ってそう呟く。

どんなことが起きているかも知らずに、二人のいる暗い森へと向かっていた……───