コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 彼女の前世はシンデレラ【イラストあり】 ( No.225 )
- 日時: 2013/10/13 17:29
- 名前: 冬の雫 (ID: ivWOcvW3)
昔から、私と律はずっと一緒にいた。
何をするにしても、どこに行こうとも、両親が縁のあることもあっていつでも一緒。別にそれが嫌なことでもないし、嬉しいことでもない。
まだ小さかった私は、律のことなんか全然意識していなかった。
小学校高学年になると、律は木ノ葉とかいう男子とつるみ始めた。
木ノ葉といる時はいつも楽しそうで、私といるときとは、全然違かった。
……だから、なのだろうか。
私はいつの間にか、律のことで頭がいっぱいになっていった。
■十五話■キミトキオク
「時間余ったからドッチボールでもするか〜」
「イェーーー!!」
青空の真下で、先生の声と無邪気な生徒たちの声が透き通って響く。
ジャージの袖部分をきゅっと握ったまま前を向くと、休憩をとる先生と、ドッチボールのボールを用意する男子たちがいた。
「じゃあドッチしようぜ!女子対男子でいいか!?」
「オーーー!!」
無駄にはしゃぐ男子たちを横目に、女子は呆れて息をつくも 渋々位置につく。
先生の「はじめ〜」と気の抜けた声と同時に、ボールを片手に持った律が「いくぜー!」とあどけなく笑ってボールを投げた。
「おりゃぁ!」
「Σ What!?」
律の投げたボールは、何故か斜め前に居た木ノ葉の背中に激突。
結構威力があったらしく、木ノ葉は「てめぇ!」と律の胸ぐらを掴んだ。
「ごめん!わざとじゃない!ごめん!」
「ぜってーわざとだろこの非リア充!!」
「その言葉だけはやめろぉーーーっ」
わんわんぎゃんぎゃん騒ぐ二人を見てケラケラ笑う男子と、変わらず呆れて声も出ない女子。
いつもの光景だった。
「気を取り直していくぞー」
男子が声を上げて、ドッチボールを再開する。
結局は女子も楽しそうにやっていて、ただ参加しないで横目で見ているのは、私だけだった。
視線が自然と“あいつ”の方へ行く。
行ってしまう。
「……“ただの幼なじみ”…」
そう。これでいい。
何も気に病むことはない。
綺麗な言葉で理屈を並べたって
“好き”とかいう感情で誤魔化したって
寂しいとか思っちゃったりしても
結局は“ただの幼なじみ”。
ほら、ね。
すぐ解決した。
これで解決出来なかったら、多分、それがホントのイワユル“恋”なんだと思う。
キーンコーン……
「あーチャイム鳴ったー」
「帰るか」
グラウンドに響くチャイムに、あからさまに落胆する男子。
密かに落胆する女子。
律も「木ノ葉、次の授業なんだっけ」と木ノ葉と話しながら校内に入って行った。
結局私は───何も、見出せていなかった。
■◆■
「仁美、ちょっといいか」
その後、昼休み。
私がちょうどお弁当を食べ終わると、珍しく、律の親友であろう香月 木ノ葉が話しかけてきた。
突然のことに、びっくりして「ナニ」とキョトンとした顔で答えてしまう。
「今から、時間ある?」
「なんで?」
「ちょっと話があってさ」
木ノ葉は少し言葉を詰まらせながら、私にそう言った。
もちろん私は顔を顰めて、不信そうに木ノ葉を見つめる。
木ノ葉は「や、そんな変なことじゃないから」と慌てて訂正をした。
「……わかった。」
私が小さく頷いて木ノ葉を見ると、木ノ葉は「良かった」と安心したように少しだけ笑った。
……何を言われるのだろうか。
少し怖いけど、木ノ葉は噂では学校一美人と囁かれているあの巳鞠 和歌と付き合っているらしいから、まァ告白ではないだろうとは思っていた。
───でも。
「…………は?」
木ノ葉に屋上に呼ばれて、少し間を置いて木ノ葉から言われた一言。
私は耳を疑った。
「………ごめん、もう一回」
「だからー。仁美、お前の前世は───」
シンデレラの、継母なんだよ。