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Re: 彼女の前世はシンデレラ【イラストあり】 ( No.30 )
日時: 2013/08/17 21:53
名前: 冬の雫 (ID: kJLdBB9S)

■三話■俺の前世は王子様、彼女の前世はシンデレラ


今世も前世も。

巳鞠の王子様が……俺?


「…え、ごめんちょっと意味わかんない」
「……ですよね」


俺が慌てながらそう言うと、巳鞠は何もかも見透かしたように俺を見た。

その瞳は───なんだか、哀しそうな。


「…えと、ですね。笑わないで聞いてくださいね。

簡単に説明すると、わたしの前世はいわゆるシンデレラです。

…で、あなたは、そんな前世のわたしを救った…王子様」


巳鞠は、ゆっくりと、静かに言葉を紡ぐ。


俺の前世が…巳鞠の王子?

巳鞠の前世が…シンデレラ?


俺…テストの点数はちょっとアレだけど、今のは流石に誰でも理解出来ないぞ。

「………。」
「…や、やっぱり信じてくれないですよね…すみません」
「……いや……。」

申し訳なさそうに謝る巳鞠を見てると───なんだか、嘘はついてないように思えた。

信じない自分に対しても疑問を覚え始め、俺は一度頭の中で整理してみる。

「えと…もし仮に、巳鞠の前世がシンデレラで、俺の前世がその王子様だったとしよう。

…巳鞠は、なんで俺の前世が王子っていうことが分かったんだ…?」

俺が考えながらそう言うと、巳鞠は「あ」と固まった。


………『あ』…?


「そ、それはですね。…ええと…」

巳鞠が慌てながら言葉を必死に紡ぐ。

俺はそんな巳鞠に首を傾げて、「なに?」と急かすように言った。

なんだか嫌な予感しかしない。

───次の瞬間、巳鞠の口から出
たのは、俺をア然とさせる言葉だった。


「………勘、です。シンデレラの。……え、えへ…」


二人の間には、長い沈黙と───ただ 冷たい風が、悠々と吹き抜けるだけだった。


■◆■


「木ノ葉おかえりー!どうだった!?巳鞠との二人っきりはどうだった!?」

「あーうるさいうるさい」

木ノ葉が教室に帰ってくるなり、親友の律は好奇心旺盛に木ノ葉に迫った。

木ノ葉は耳を塞いで、聞こえないフリをする。

「なんだよー」

ぶー、と頬を膨らます律。
木ノ葉はそれにさえ気付かない様に、自分の席に座った。

「次は三時限目だぞ。木ノ葉くん二時限目サボっちゃってずるいー」
「………」
「しかもアノ巳鞠と居たんだろ?告白でもされたのかなー木ノ葉くん?」
「………」

そのとき木ノ葉が思ったこと。
それは───


“う ざ い ”。


正論だ。


■◆■


時は少し戻って、屋上でのこと。

「あの、さ…。巳鞠は、それを俺に伝えてどうしたかったの?」

木ノ葉は、困ってどうしようか考えている巳鞠に恐る恐るそう言った。

答えは聞きたいけど───何故か、聞きたくない。

「…それは……、」

この時の巳鞠は、恥ずかしがらずにはっきりと言った。


「…わたしと、付き合ってほしいんです」

「……えっ?」


耳を疑った。

風は何も知らずに、二人の風をゆっくりとなびかせる。

今、なんて……───


「……な、なんで…?確か巳鞠って、そっち関係で淵菜と噂になってるんじゃなかったっけ…」

「ふ、淵菜って… 淵菜 雨くんですか!? そんなことはないですよ…!」

「あ、そーなの」


第一 淵菜くんと喋ったこともありませんし、と巳鞠が顔を赤らめて下を向いた。

やっぱ可愛いな、と木ノ葉が思うのは…まぁ、無理もない。

「……え、でもなんで付き合う必要があんの?」
「………?」
「いや…要は、前世の巳鞠と俺がラブラブだったから、今も付き合えって巳鞠は言ってるんじゃないの?」

木ノ葉が笑いながら言うと、巳鞠はせっかく上げた顔をまた下に伏せた。

そして、ハテナマークを浮かべる木ノ葉に───「…鈍感なんですか」とポソリと告げる。

「……え?」
「あなたは本当に…前世から何も変わってない」
「? ?」

さっきから「え?」という言葉が異様に多いような気がする。

…そのくらい、木ノ葉にとっては驚きの連続らしい。

「……わたしは」

半ばヤケになりながら、巳鞠が息を吐くと同時に言葉を零した。

木ノ葉は「うん」とキョトンとしながら巳鞠を見る。

やっぱり風は───静かに、吹き抜けた。



「…あなたのこと好きになっちゃったんです。


王子様みたいに、キラキラしてるあなたが。

───これ以上の理由が…ありますか?」



巳鞠は静かにそう言って、木ノ葉を見た。

真っ直ぐに───澄んだ瞳で。


『一生愛してるよ、シンデレラ』


ふと、そんな声が木ノ葉の頭に響いた。

これは───自分自身の………声?


「……あい、してる…」


そう、いつかそう言った記憶がある。

愛しい───シンデレラに。


「……木ノ葉さん…?」


ボーッとしている木ノ葉に、大丈夫ですか、と巳鞠が顔を覗いた。

木ノ葉は、巳鞠を見る。


「……うん、思い出した。


───俺は、巳鞠の王子だ」


前世も今世も。
───恐らく、僕たちは永遠に愛し合うだろう。