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Re: 彼女の前世はシンデレラ ( No.7 )
日時: 2013/08/14 16:27
名前: 冬の雫 (ID: JxRurJ5z)


『一生愛してるよ、シンデレラ』


愛しく甘い声が耳に響いて、わたしはいつも目が覚める。
目が覚めれば───そこは、見慣れた自分の部屋。

パステルカラーのカーテンから差す木漏れ日が、朝だと伝えている。

「………また、前世の夢か…」

『前世の夢』。

そう、わたしはいつも、前世の記憶が夢として蘇る。
だから、前世のわたしが誰なのか、何をしていたのか、全て分かる。

「……今のわたしの王子様は…いないのかな」

半ば諦めたようにため息をついて、ベッドから降りた。


『一生愛してるよ、シンデレラ』


夢で聴いた声が頭の中でリピートされる。

そう、わたしの前世は……───



『彼女の前世はシンデレラ』


■一話■シンデレラとの出逢い


「ふぁぁ……」


アクビが出た。
自分の席が窓側だから、直でくる春のうららに負けてしまって。

───只今、一時限目の授業中。

あ、やばい。
そう思った頃には───教卓の所にいた筈の担任が、いつの間にか俺の席のすぐ側に来ていた。

「…香月、今の問題解いてみろ」

…やばい。
俺の身体の危険センサーが反応して、横目で黒板をチラッと見る。


………全っ然わかんねぇ。


「答えは?」

担任が試すようにそう言う度に、近くの奴らがクスクスと俺のことを笑った。

…あいつら、後で覚えとけよ…!

「…えっとー…、√2………?」
「√5だ馬鹿野郎。後で職員室な、香月」
「えぇー……」

職員室て…サイアク。

俺が思いっきり嫌そうに顔を顰めると、担任が「さぁこいつはほっといて授業始めよー」と白けた顔で教卓の方へと戻って行った。

だーもうサイアク!!

そんな叫びも心の中にしまい、俺はまたアクビをしたのだった。

■◆■

「はっはー!バカじゃねぇの木ノ葉!」

香月 木ノ葉の親友、三堀 律(みほり りつ)がゲラゲラと笑いながらそう言った。

木ノ葉が、職員室の呼び出しから帰ってきたところだった。

「うるせぇよ!てゆーかいつものことじゃんか」
「まぁなー!…っはぁ、おもしれぇ」
「俺をネタにするなよっ」

律は一通り笑ったところで、「あーそういえばさ、巳鞠 和歌のことなんだけど」と突然スイッチを換えて言った。

そのスイッチを切り替える早さに木ノ葉は内心驚きながら、律を見る。

「巳鞠?ってあの?」
「そう、あの巳鞠。学校一美人で有名なあの巳鞠 和歌!」
「学校一美人ねぇ…。俺あんま見たことねぇからわかんね。
で、それがどうしたの」
「実はな、」

律が、声を低めにして、でも笑いながら木ノ葉に言った。

「…巳鞠のこと、淵菜が狙ってるらしいんだよ」
「………えっ」

木ノ葉が固まった。

淵菜 雨、といえば、巳鞠 和歌なみに学校中で人気があるのだ。
そして二人は、“美男美女”こと“シンデレラカップル”とまで呼ばれているらしい。

…まぁ、二人の面識は全くないのだが。

「淵菜が巳鞠を狙うって?淵菜って確か、“ドS”と“彼女は作らない派”ってレッテル貼られてなかったっけ?ありえないだろ」
「それがな、ここ最近ウワサになってて……───」

律がそう紡ごうとしたとき。


「あの、ここに香月 木ノ葉くんいませんか…?」


そんな声が聞こえて、木ノ葉と律は同時に振り向いた。


そこには───ウワサの、アノ巳鞠 和歌が居た。