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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【短編集】恋して、愛して、抱きしめて。 ( No.1 )
- 日時: 2013/08/27 22:23
- 名前: 八田 きいち。 ◆8HAMY6FOAU (ID: HfS/slXT)
お狐様と女。
それは小さな村のお狐様のお話。
むかしむかしあるところに、山に囲まれた小さな村がありました。
その村の南側には『狐山』と呼ばれている山があり、
山の中伏にはお狐様を祀った神社『狐神社』がありました。
そしてその神社には、美しい白銀の毛並みを持つお狐様が住んでいました。
お狐様は病を治すという力を持っていました。
気まぐれには村人たちの病を治したり、
流行り病を村にはいかせないようにしたりと、
それなりに神様の仕事はしていました。
しかし、お狐様はとても悪戯好きの変わった神様でした。
村の人間たちを化かして驚かせた夜には、
山にはたくさんの狐火が灯り、一晩中、山の妖たちと共に宴会を開いていました。村人たちは怒るにも怒れず、その夜は山に灯る狐火を眺めながら眠りにつくのでした。
そんなお狐様は、ある一人の女に出会いました。
その女は重い病を患いこの村のお狐様に治してもらおうと、
遠くの村からはるばるやってきたのでした。
その女は、とても美しい黒髪と黒い瞳をもつちょっと気の弱そうな女でした。
お狐様はその女の病を聞いて、思わず顔をしかめました。
女は不治の病を患っていたのでした。
お狐様は病という病は治せても、死んでしまう病は治せませんでした。
死んでしまう病を治すことはお狐様にはできます。
しかし、神様の掟に反することになるのでした。
お狐様が女の病を治すことができないと告げると、
女は少しだけ悲しそうな顔をしてから儚げに笑って帰ったのでした。
あれからお狐様は女のあの儚げに笑う顔が忘れられなくて、
一日中、女のことを考え、そしてため息をついていました。
それは人間でいう『恋』であると、
お狐様が気付くのは、
もう少しあとでした。
つづかねぇよ(ToT)/~~~
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