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- Re: 【短編集】愛しい貴方との恋模様。 ( No.28 )
- 日時: 2013/12/16 22:39
- 名前: 八田 きいち。 ◆8HAMY6FOAU (ID: La6RhnJe)
その小さい優しさ。
「っはあ!はぁ、はぁはっ……きついっ」
照りつける太陽の下。
体育の長距離走。
あたしは重い足を必死に動かしながら、
校庭を走っていた。
「うわ!おま、おっせぇな!」
「っ、うっせぇよ!もっちぃー!」
かなり皆から離されて最後尾を走っていたあたしの後ろから、
クラスメイトのもっちぃ(本名:基樹)がニコニコ顔で声をかけてきた。
男子バスケ部レギュラーのもっちぃは運動神経抜群。
顔も可愛いからそれなりにモテる。ちなみに長距離走が得意らしい。
(あたしと違ってな!)
心の中で悪態をつきながら、
なぜか襲ってくる羞恥心に顔を赤くする。
「お前、普段走らねえからだわ」
「っ、仕方ないじゃん!文化部だもん!」
「てか、マジ走り方なってないよ。リズムを感じろー」
「はあ?!……げほっ、やっべ…ごほっ」
きつい状態で大声の会話はかなりダメージだったらしく、
肺が圧迫されて息することすらきつい。
「お、おい!大丈夫か?!」
「っ、だいじょぶだ、っつーの…げほげほっ」
咳のしすぎに涙が目尻にたまる。
隣で心配そうにあたしの顔を見つめるもっちぃの背中をバシッと叩く。
情けない。
そんな自分が恥ずかしい。
「……頑張れ」
「お、っおう!」
そう言って、もっちぃは最後の一周を走りに行った。
すぐに小さくなる背中を見つめながらなぜか寂しくなる。
わけわからんが、とりあえず走り終えよう。
あたしはもう2周半くらい遅れている。
クラス最下位間違いなしだ。
「すっげえー!もっちぃ一位じゃん!!」
「いつもよりはええええ!」
そんな声が後ろから聞こえた。
(早いな、もっちぃ。もうゴールかよ)
あたしも頑張らねば、っと少しだけペースをあげてみる。
と、その時だった。
「あっ、おい!もっちぃ!もう終わりだろ?!」
「え、もっちぃどしたん?」
「え……?」
「はあっ、頑張れー!もうちょっとだぞー!」
走り終えたはずのもっちぃがあたしの後ろに追いついていた。
いつものヘラヘラ顔で、あたしの隣に来る。
「もっちぃなにしてんの?!終わったしょ?…っはあ!」
「いや、おれ、まだ余裕だからな!」
さっきより疲れた顔。
首筋をしたたる汗をみればそんなことないってわかる。
「それに、一人で最後のゴールは寂しいじゃんか!」
「……ばか」
その優しさをあたしは独り占めしたいと思いました。
