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第四十六話『私の名前』


































——……ん？
水城さん？


水　城　「　さ　ん　」　？


「誰が水城のボディーガードなんかするかよ」


村野のその言葉で、私は我に返った。
……衝撃的、すぎる。


なにがって、村野の言葉なんかじゃなくて——。
孝仁の、私の呼び方がだ。
『依麻』じゃなくて『さん』付け。
しかも苗字にさん付け。
前は下の名前で呼んでくれて、人前でも苗字で呼び捨てだったのに……
。


水城『さん』だと？


孝仁がどんなに美紀ちゃんとラブラブしようと、イチャイチャしようと。
私にとって、それを遥かに超える衝撃だった。
もう、私と孝仁は——。


『水城さん』だなんていう遠い人のような関係になってしまったんだ。


一緒の帰り道だからって。
ちょっと話せたからって、浮かれてた私が馬鹿だった。


「……っお、お疲れ様っした!!」


なんだか泣きそうになったので、私は太めの声になりながらもその場から急いで立ち去った。


……だめだだめだ、最後の最後で。
これで全部最後だからこそ、終わらせなきゃいけないのに。


自分に情けなくなりながら、悲しくなりながら——。
必死に振り払おうとして、私はひたすら走った。