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第五十四話『彼の理由』


そのまま孝仁がグループLINEから抜けて、早二日。
結局彼は、いつまで経っても戻ってこないままだった。


『孝仁、もう戻ってこいやー』


同じクラスの海澤なおみがクラスのグループでそう言い、またLINEが活発になる。
私は黙っていると、『なんで孝仁は退会したままなのか』という話題になり——。


『孝仁にも理由がある』


文哉がそう言い放ち、私はフリーズ。
……これは、私のせいなのでは。


『やっぱりそうなのか』


周りの人達はそう言い、再びLINEは活発になる。
……一部の人たちは、何か知ってそうだな……。
そう思った私は、一か八かでなおみにLINEをして聞いてみることにした。


『やっぱ気まずいらしー

でもね、周りのことも考えろって
いっといた』


数分経った後に返ってきた、なおみからの返事。
気まずい……のか。


『ありがとう！
気まずいって誰と？』

『俺いたら依麻も美紀も
コメントしずらいと思って
って言ってたよ

だから俺いなきゃいい話って！』


なおみからそう返ってきて、私の指は止まる。
孝仁も少しは考えてくれてたんだ……なんて。
ちょっぴり、嬉しくなる私が居る。


でも、


『なんでそこに美紀ちゃんまで？
美紀ちゃんは孝仁の彼女だから、
コメントしづらいとかもないしょ(笑)

でもやっぱ周り考えてほしいね
なおみ、ありがとうね＞＜』


ちょっと皮肉っぽくなったし文章ぐちゃぐちゃだけれど、そこが疑問だった。


『なんもだよ！
依麻もクラスLINEのとこは楽しも！』

『うん！
ありがとう

結局孝仁は私と気まずかったってこと？』


なおみに聞いても、どうにもならないかもしれないけれど。
でもなおみが知ってることは、少しでもいいから教えてほしかった。


『多少は気まずかったから
退会したんだと思う』


なおみからそう返事が来て、私は俯く。
やっぱり孝仁も気まずいのか……。
私も気まずいから、当たり前だと思うけれど。


そう思っていると、


『美紀とのこと見せつけとか
したくなかったってことだと思うよ』


なおみから、こんなLINEが来た。


『美紀とのこと見せつけとか
したくなかったってことだと思うよ』……？
この文章の意味が、よく理解できなかった。


孝仁は美紀ちゃんと見せつけをしたくなかったってこと？
……いや、でもそんなわけがないよな。
だったら最初からあんな風なやりとりしてないだろうし……。


とりあえずよくわからなかったが、


『本当にありがとう、なおみ！』


お礼を言って、なおみとのLINEを終了し——。
そのままクラスのLINEを見ると、孝仁が復活していた。
元気いっぱいで、陽子や文哉とグループLINEではしゃいでいる。
……様子は、いたって変わらない……よな。


私は最初それを眺めていたが、だんだんと睡魔が襲ってきて——。
いつの間にか、携帯を握りしめたまま眠っていた。