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Re: *涙恋華*(実話) 30話更新! ( No.78 )
日時: 2013/10/20 18:49
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 4SWfsvrw)
参照: ごめんね。

第三十四話『突然の救世主』


最低な女。
自分の頭の中に、そんな言葉がぐるぐると駆け巡る。
……諦められるなら、諦めたいよ馬鹿野郎。


そう思いながら、私は自分の席で大きく伸びをする。
美紀ちゃんが隣に居て少し気まずいのと、笑顔でいなきゃいけないプレッシャーと、孝仁のこと。
そんなことが頭の中をぐるぐると周り、もはや授業どころではなかった。


「——孝仁、美紀とさ——……」


そこでタイミング悪く、孝仁側の席の方からそんな会話が聞こえてくる。
見れば孝仁の隣の席で美紀ちゃんと仲のいい女子が、孝仁と楽しそうに話していた。


「美紀と順調?」
「順調。当たり前だべ?」


美紀ちゃんの方を見ながら、そう無邪気に笑う孝仁。
席が離れていても、孝仁はやっぱり美紀ちゃんの事を授業中も見守っていて——。
ニヤけた顔で、美紀ちゃんの話をしている。


……私のタイミングの悪さよ。
もうわかってるし、どうしようもないことなのに——。
まだ好きな分、やっぱりそれを見てしまうと辛くて。


意味もなく、悲しくなっている私が居る。


徐々に、視界が滲んできて。
……なんで泣きそうになってるんだ、私。
今は授業中、授業中だよ。
私は必死に涙を堪える為に、そう自分に言い聞かせていた——が。


「えーまっ」


そう言うときに限って、美紀ちゃんが話しかけてくる訳で。


「ん?」


私は必死に笑顔をつくり、なるべく明るくそう言うけれど。


「依麻っ」


そう無邪気に笑う美紀ちゃんの顔を見ていると、不思議と孝仁の顔と重なって——……。
涙が一粒落ちるのと同時に、私は慌てて顔を伏せた。


「……え、依麻どうしたの!?」


美紀ちゃんは当然驚きの反応。
……だめだ、美紀ちゃんの顔が見れない。
あーあ、これでまた美紀ちゃんが周りに色々言うんだ。
下手したら孝仁にも色々言われて——。


それにまた私が泣いてても、余計嫌われるだけだ。


「ご、ごめんね、美紀ちゃん! なんでもないから!!」


私は必死に涙を拭いて、なるべく笑顔でそう言った。
しかし美紀ちゃんは、


「……あぁ」


冷たい目で私を見て、いつもより低い声でそっけなくそう呟いた。
か、顔に出てるよ美紀ちゃん……。


「……っふぅー」


ここで真顔を保とうと、私は一人で呼吸を整える。
だけどそんな自分がなんだか虚しくなって、また涙が出そうになってしまった。
——やばい、また視界がぼやける。


そう思った瞬間、


「——おい、滑舌悪いの」


横からそんな声が聞こえて、私は慌ててその声の主の方を見た。


そこにいたのは、


「……あ、気付かれた」


そう笑みを浮かべる、翔斗で。


「……ちょ、なんだよ!」


私は笑みを浮かべる翔斗の方を見て、慌てて目を拭いながら笑う。
翔斗はというと、ただ笑みを浮かべている。


「……本当お前、滑舌悪いなー」
「うるさいなー」
「お前最近マスクしてるけど、マスクでかくね?」
「うるさいうるさい」


翔斗はからかうような口調でそう言い、私は自然と笑みが零れる。
気が付けば、涙も止まっていて。


……もしかして、私が泣きそうだったのに気付いてくれて話しかけてくれた?
もし、そうだとしたのなら——。


救世主です、翔斗さん。