コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *涙恋華*(実話) 42話更新! ( No.98 )
- 日時: 2013/11/23 23:54
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: QNd6qtAW)
第四十四話『手の振る先』
「……甘いもの、食べれる?」
「うぇ?」
孝仁に急に話しかけられ、私は驚きすぎて変な声が出る。
——約二か月ぶりの、会話。
嬉しさと同時に、私が甘いものが好きと言うことももう覚えていないのか——なんて。
ちょっぴり、悲しくなる私が居た。
「甘いもの、好きだけど……」
私はそう呟くが、孝仁はスルー。
……おいこら、聞いといてスルーかよ。
私は小さく溜息をついた。
「——おい、これってどっちだよ」
改札口につながるドアが二つあり、私達の足は止まる。
これで市内に帰れるか、隣の市に行くか別れるのだろうけれども——……。
そう思っていると、真っ先に孝仁が動いた。
「あっちだべ、行こ」
「……え、孝仁? こっちじゃね?」
「黙ってついてこいや」
孝仁は村野の制止を振り切り、足を進めていった。
私達もしぶしぶ孝仁に着いていく。
そのまま孝仁が豪快にドアを開けると——……。
「……え?」
タクシー組の美紀ちゃんたちが登場。
「やっぱり違うじゃねぇかよ、馬鹿」
村野のそんな呟きが、辺りに広がる。
そういえば孝仁、方向音痴だったな……と今更思い出す私。
「孝仁くん?」
美紀ちゃんが目を丸くしてそう言い、私の胸は小さく痛む。
それと同時に、
「アンタ達の電車はあっちだよ」
あゆがそう言い、私達は顔を見合わせる。
気が付けば、美紀ちゃんは孝仁に向かって手を振っているけれども——。
孝仁は、気づいていない。
「依麻、女子一人なんだね」
「がんばれ、依麻」
「ありがと!」
クラスの女子たちがそう言い、私は笑顔で手を振る。
それに対し、美紀ちゃんも
「ばいばい!」
そう言ってくれたので、
「ばいばーい!」
私も美紀ちゃんに向かって手を振りかえす……が。
しーん。
「……え」
一気に辺りは静まり返り、美紀ちゃんは私をスルー。
美紀ちゃんにばいばいと言われたかと思って手を振り返したけれども——。
私はもはや眼中にすら入れられてなかったらしく。
美紀ちゃんが「ばいばい」と言っていたのは、私じゃなくて孝仁だった。
勘違いをした自分が恥ずかしいし、何よりも——。
孝仁にだけ手を振っている美紀ちゃんが、どうしようもなく嫌になった。