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Re: 氷 ( No.28 )
日時: 2013/09/18 18:31
名前: 氷麗 (ID: ktFX/uOB)
参照: KORIREI

楓に言われたからと言って帰ることはできない。

「私は帰らない。かといってここに居座る気もない。」

やがて楓にそう告げた。

「そうかい。あんたがそう決めたならそうしなさい。大事なのは自分の意志なのだから。」

意外だった。

あんなに帰れ帰れと言っていたのに私が帰らないと言っても反対すらしなかった。

「ただ1つ言っておくよ。
貴方はどのような形になろうとも家に帰ることになるの。どの様なことがあっても。」

「ふん。本当にそうなるか試してみる。家に帰るなんて万に一つもない。」

「気を付けていってらっしゃい。」

楓は最後まで微笑んでいた。

私はドアノブを掴むとギシッと音のする扉を開け音をたてて閉めた。

何も知らないやつに手を出されたくない。

何もしないやつは口を出して欲しくない。

何で私は怒ったんだろう。

そればかり考えるようになった。

私は望実という名前について聞いた。

それに答えようとした雫になぜ怒鳴り、なぜ出て行ったのか。

もう思い出せない。

私のそもそもの目的は自分を探すこと。

なのになぜ私はそれを拒んだのだろう。

知りたくないことだったのだろうか。

過去に何かあってそれで反射的に拒否してしまったんだろうか。

楓が言うようにもし雫に会ったら私は何と言って謝るのだろうか。

楓に対してもなぜ怒ったのだろうか。

帰りたくてたまらないという楓の見解は間違っていないのに…

何もかもわからない。

私は何を拒んでいるのだろうか。

何故答えを拒んでしまうのだろうか。

「あーーーもう!!!」

頭の中滅茶苦茶だ。

過去にいったい何があったんだ。

何がこんな気持ちにさせているのか?

とりあえず雫のもとには帰らない。

またいつもと同じ旅に戻るだけ。振り出しに戻るだけ。

全てなかったことにすれば良い。

それですべて終わりだ。

雫に会うにはせめて心の整理をしなければならない。

「もう、使ってもいいよね。」

そう言うと鞄の中から時廻りの香炉を出した。

以前過去に行った話はもうほとんど覚えていない。

なぜなら未来が変わってしまったからだ。

この記憶は私にしか残っていない。

存在しなかった出来事が記憶にずっととどまることは無い。

だが待てと言った。

私は十分待ったし時廻りの香炉について雫に聞いたこともある。

もう行くしかない。