コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 怪盗ユア-満月の夜はBad Night- ( No.15 )
日時: 2013/09/27 09:30
名前: 本間あるる ◆uQ8sUBcURw (ID: DboXPOuE)



——この置物、まさか……。


そうしてくり須は、しばらく、その置物をじっと、それこそさげすむように見つめていた。
それこそ、穴の開くほど。

そして、

「……早く家を出なかったのは謝るわよ。集合時間に集合場所に行かずに、こうして遅れたのはアタシよ。それは謝る。ごめん。だけど、狸の置物は、ないと思うんだけど」

突然、狸の置物に話しかけ始めた。

はたから見れば、「あれ、くり須ちゃん、頭、どうかしちゃったの?!」とこう思われるかもである。


しかし。

くり須の言葉に、刹那、狸の置物が揺れだしたのだ。
ぐらぐらぐら——。
かと思うと、背中のチャックがジーっと開き、中から、くり須と同じ制服に身を包んだ麗しの女子中学生の姿が。

「くっそおーー。また見破られたかーーっ」

狸の置物から羽化した女子中学生が、腰を叩きながら悔しそうにそうつぶやく。
くり須はそのような様子の少女に、

「……柚亜ゆあ、……だからなんでいつも朝会う度に私、アンタのコスプレファッションショーなんかにつきあわなくちゃなんないのよ」
「『コスプレファッションショー』とは失礼なっ!」
「じゃあなんなの」
「なんなのかって? ……愚問ぐもんですなあ」

ヒッヒッヒと不吉な笑い声を立てる。
刹那、ズビシッと人差し指を突き出して、

「変装! すなわち怪盗の美! そのような気高きものを、そんじょそこらのお遊びコスプレ何某なにがしなんかと一緒にしてもらっちゃあたまんねえ! 先祖代々の怪盗さんたちが草葉の陰で泣いてるわ!」
「……アンタ、ここ来る前に時代劇か何か見てきたでしょ」
「……あ、バレた? 少しね、すこーしっ」
「また変な言葉覚えてきちゃって……とにかく、私は怪盗云々うんぬん言われたって、知らないからね。私はアンタと違って凡人なんだから」
「……二年連続成績トップのアンタが凡人ってのもおかしいと思うけど……」
「そこ! ボソボソ言わない! 聞こえてるわよ!」

へーい、と気の抜けた柚亜の声に、くり須はふうと軽く息を漏らした。
少しの間息を整えて、それから、急に小さな声で柚亜に話しかける。


「っていうかさ、こんなところで『怪盗』とか、おおっぴらに言っちゃって、大丈夫なの? 仮にも警察に追われてる身なのよ。少しは世間を気にしなさいよ」
「まあ、ユアはまだ怪盗の『見習い』だしー。捕まるのは、パパさんだしー」
「なんちゅー他人事ひとごと……。その『パパさん』もよ。昨日の真夜中にも、聞いたんだからね。アンタのパパさんの叫び声」
「あら」
「あら、じゃないわよ。……これで何回目だと思う? アンタたちが深夜に何やってんのか知らないけどね、こっちはおかげで、ずいぶんな迷惑よ……ふあああ。おかげで寝不足……」
「パパさん、また警察にご厄介になってたんだ」
「今月に入って6回目よ。黒マントに黒いシルクハット被った変質者が騒いでるーって。……アンタたち、本当に『怪盗』としての自覚、あるわけ?」
「問題ナーシ!」
「その態度に問題大アリよ……」

Re: 怪盗ユア-満月の夜はBad Night-【感想thanks】 ( No.16 )
日時: 2013/09/27 23:01
名前: 明鈴 (ID: 0H2MybmK)


くり須と柚亜がいつも待ち合わせをしている公園前を通り過ぎると、前方にくり須たちが通っている私立聖ルクス学院中学校の校舎が見えてくる。
四階建てで、白塗りの豪華な校舎だ。
校舎の奥には、無駄に広いグラウンドが広がっている。
校舎内は全て暖房冷房完全装備。
快適な学校生活を送るためという理由で、廊下には床暖房まで整備されている。

さすが、お坊ちゃんお嬢様学校。


ちなみに、校舎中央に設置されている煌びやかな装飾の施されている時計は、現在8時20分をさしている。

「おはようございまーす」
「おはようございます」

さて、これまた豪華で大きい校門の前で、風紀委員が『朝のあいさつ運動』たるものを実施していた。
中に先生もまじって、委員会の面々と共にあいさつ運動をしている。


くり須と柚亜は、挨拶もほどほどに、駆け足で校門を通り過ぎて……。

「おはようございまー……あ、くり須さんっ!」


Re: 怪盗ユア-満月の夜はBad Night-【感想thanks】 ( No.17 )
日時: 2013/09/27 23:03
名前: 本間あるる ◆uQ8sUBcURw (ID: 0H2MybmK)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=33552

↑すんません(‾▽‾;)
明鈴なってますが、私が執筆してます(‾▽‾;)

Re: 怪盗ユア-満月の夜はBad Night-【感想thanks】 ( No.18 )
日時: 2013/09/28 02:12
名前: 本間あるる ◆uQ8sUBcURw (ID: 0H2MybmK)

風紀委員の一人に、捕まってしまった。

「くり須さーん! おーい!」

ご丁寧に名前を叫びながら、ついでに全力で手を振りながら駆け寄ってくる。
——ワカメ頭の、男子生徒。
見慣れた容姿に、くり須は「げっ」と顔を引きらせ、その隣で柚亜は「ごしゅーしょーさまー」と笑顔で呟く。

「あの子……一年生の……南沢礼人(みなみさわ れいと)じゃ……」
「だね」

目の前でぜぇはぁと息を切らし、しかし、くり須が目の前にいると自覚すると、男子生徒はすぐさま、ばばっと姿勢を正し、

「おはようございます、くり須さん。今、ご登校で?」
「見りゃわかるでしょ」
「常に学年トップ成績優秀、それに容姿端麗、性格良し! ……そして、いつ見てもうるわしいっ……。憧れです! くり須さん!」
「それはどうも」
「くり須さんはこの学校の女神さまですっ。いつも応援してますから!」
「そう。……いつも見かけたら声かけてくれるもんね。ありがとう」
「そそそんなっ……! 僕なんかにお礼のお言葉などっ……いや、もったいない……」
「…………」
「ぼ、僕っ、いつまでも応援してますからっ……! だから、その……!」
「ちょいちょい、」
「は、はい……?」

必死になりすぎて思わず目を瞑っていた南沢礼人は、柚亜に声をかけられ、我に返った。

「南沢くん、だっけ。くり須なら、とっくに向こう行っちゃったわよ」

校舎の方を見やると、鞄を揺らしながらくり須が今まさに校舎に入っていくところであった。

「あああ……くり須さああん……」
「はいはい。まあ頑張ってね、フウキイインサンっ」

嘆く風紀委員の肩にポンッと手を置くと、柚亜はくり須の後を追って、校舎に入ったのだった。


******

「予告状……?」

2年B組のクラスの一角で、柚亜は思わず声を上げていた。