コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

始まりの場所【2】 ( No.13 )
日時: 2014/09/30 23:45
名前: ゴマ猫 (ID: /..WfHud)

 渚と途中で別れ、少し歩いていくと、やがて古ぼけたアパートが見えてきた。俺の家だ。バイト先は駅前にあり、家はそこから徒歩10分っといったところか。

 駅から近いし、最初はこんなボロでも家賃が高いんじゃないか? って思ったのだが、意外や意外、めちゃくちゃ安かった。間取りはワンルームで、風呂とトイレもついて1万円だ。なぜこんな安いかっていうと、『出る』らしい。『出る』っていうのは別にネズミやゴキブリではない。
 ……霊的なやつだ。
 なんでも一番最初の入居者が毎晩出てくる『それ』に悩まされてたらしく、ついには耐えられなくなり引っ越した。その後も新しい入居者が入ってきては引っ越しという繰り返しだったそうだ。
 大家のおじさんも困り果てて、ならいっその事格安で貸してしまえって事になったみたいだ。
 あいにく、霊感なんて米粒ほどもない俺にとっては最高の物件なわけで、即決即断で入居したという訳だ。もちろん、学生の俺が入居できたのは訳があるのだが、それは今はいい。実際、住み始めてから1ヶ月経つが別に何も変わった事はおきていない。

 今にも底が抜けるんじゃないかという金属製の階段をあがっていくと、201号と書かれたプレートがついた扉の前に着く。(1階は倉庫になっていて、貸しているらしい)

「さて、今日も疲れたし風呂入ってささっと寝るか」

 俺は誰に言った訳でもない、ひとり言を呟きながら玄関の鍵を開けて部屋へと入った。真っ暗な部屋の中に電気をつけると、すぐさま風呂場へと行き、シャワーで軽く汗を流してひと息つく。

「……さすがに冬場はシャワーだけじゃつらいか」

 部屋へと戻り、タオルで頭と体をふきながら12月の寒さを実感していた。着替え終わると疲れのせいか、俺はいつの間にかウトウトと床で眠りに落ちてしまっていた。