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疑惑の幽霊【6】 ( No.26 )
日時: 2015/04/25 15:25
名前: ゴマ猫 (ID: RnkmdEze)

「……ん、もう朝か」

 カーテンから太陽の光が差し込み、俺のまぶたを刺激する。冬のひんやりとした空気は布団から出る気持ちを奪っていく。太陽だって冬の寒さをやわらげてくれやしない。あぁ、もう早く春とかにならねーかな? そんな事を考えながら布団をミノムシのように体にくるませたまま、手を伸ばして着替えを取る。我ながら器用なもんだ。

「ん? そういえばあいつ」

 制服に袖を通しながら、2夜連続で家に出てきた不審者さん(女の子)の事を思い出し、あたりを見回してみるが、やはり部屋の中には誰もいない。
 やっぱり、ただの夢か。これで謎が解けたし、心おきなく日常生活に戻れるな。いや、別に気にしてた訳じゃないけどな。


 ***


「夢だった?」

「あぁ、どうやら疲れ過ぎが原因なんじゃないかと」

 その日の学校での休み時間、俺は友人の涼と謎の女の子(夢の住人)について話していた。

「……それにしては具体的というか、随分とはっきり覚えているんだな?」

 黒縁メガネの中心を右手で抑え、クイっと上にあげる動作をしながら、そう話す涼。
 確かに、大抵の夢なんてものは時間が経つにつれて忘れてしまうものだし、覚えている事自体珍しいのかもしれない。
 夢はその人の精神状態をあらわしているなんて、どっかの誰かが言っていたが、正直それも嘘臭いもんだ。 もしそれが事実なら俺は『あの女の子に会いたかった』っという願望があった事になる。もしくは、『寂しかった』とかか?
 ……どちらにしても、1ミリも可能性がないな。

「ただの偶然だろ。というか夢だってわかったんだし、この話しはこれで終わりだ」

「はぁ、準一の頭はどういう構造してんだか……俺だったら偶然なんて言葉じゃ片付けないね」

 涼は深いため息をついた後、やれやれといった表情をして俺にそう言う。

「なんだ? 運命だとでも言う気か?」

 涼の言葉と態度に少しムッとした俺は挑発的な言葉で涼に返す。

「これは俺の予想なんだが……準一は取り憑かれている」

「…………」

 涼が真面目な顔してそんな事を言うもんだから、俺は呆れてしまった。つまり、あの女の子は幽霊で俺に取り憑いてしまったとでも言いたいのか? 冗談も休み休みに言ってほしいもんだ。
 テレビでやってる心霊なんちゃらなんてのは、ほぼ嘘っぱちだ。個人が投稿したやつなんて特に怪しい。

「涼、頭の方は大丈夫なのか?」

「わかってないな準一。隣街では不思議な体験をした高校生だっているんだぞ? それも夢に関する事だった」

 涼は得意気な顔で俺に話す。
 隣街の不思議な出来事については俺も知っている。なんでも夢の中に動物が出てきて、その人の記憶を消すとかなんとか。一時期この街でも話題になったのだが、俺はただの都市伝説だと思っている。

「それは、ただの噂だ。そんなものに振りまわされるほど俺はバカじゃない」

「嘘だと思うなら確かめてみたらどうだ?」

 涼の黒縁メガネがキラリと光った。(ような気がする)……はっきり言って面倒な予感しかしない。