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清川 準一【過去編】 ( No.34 )
日時: 2015/04/25 15:29
名前: ゴマ猫 (ID: RnkmdEze)

 窓から見える景色が暗くなっていき、僕は不安になってきた。もしかしたら、またお仕事が終わらなくて帰ってくるのが遅くなるんじゃないか? そんな思いが頭をグルグルと回っていた。

「お母さん、お父さんはまだ帰ってこないのかな?」

 たまらずリビングのソファーの上からキッチンで夕食の準備をしている、お母さんに尋ねてみる。

「帰ってくるわよ〜、お父さんはいつも約束を守る人だもの。きっと準一へのプレゼントを買うのに時間がかかってるんじゃないかしら?」

 お母さんはとくに気にした様子もなく、僕にそう返事をした。その言葉に安心したが、同時に『もしかしたら帰ってこないんじゃないか?』という不安感にも襲われた。


 ***


「……来ない」

 時計の針が天井をさして日付が変わる。僕は眠い目をこすりながら玄関の扉の前でお父さんを待っていた。

「準一、お父さん今日は帰ってこれないかもしれないからもう寝なさい」

 お母さんは優しく諭すように話しかけてくる。
 ——でも、今日は、今日だけは一緒に居たかったんだ。僕の誕生日だったから。僕が俯いたまま動けずにいると、お母さんはさらに優しく、包み込むように話してきた。

「準一、お父さんは約束を守る人よ」

「…………」

 言っている意味がわからなかった。だって、今日は帰ってこれなかったじゃないか。

「準一の誕生日には間に合わなかったけど、お父さんはきっと一生懸命、間に合わせよう、準一との約束を守ろう、としたはずよ?」

「……でも」

「そうね……でもね準一、そういう気持ちが嬉しいじゃない。お父さんは準一の事が大事だから一生懸命なのよ?」

「……わからないよ」

 僕がそう言うと、お母さんは少し困ったような表情に変わった。

「よし、じゃあ明日お父さんにはよく言っておくから」

「……うん」

 そのまま、その日は沈んだ気分のまま自分のベッドで眠りについた。