コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ユキと渚【11】 ( No.40 )
- 日時: 2015/04/25 15:35
- 名前: ゴマ猫 (ID: RnkmdEze)
「ふぅ、ごちそうさまでした。ありがとな、渚」
「いーえ、どう致しまして」
渚が作ってくれたオムライスを約2人前食べてしまった。『私、あんまりお腹が空いてないから食べていいよ』なんて言うもんだから渚の分も半分以上食べた。満腹状態のせいか、急に強烈な眠気に襲われる。
「あれ? 何か眠そうだね」
「……満腹になったら眠くなってきたんだ」
「準一、子供みたい」
何かしら反論したいところだが、夕飯の恩義があるため、言いかけた言葉を飲み込む。
「悪い、ちょっと寝ていいか?」
「……いいけど、私は放置なの?」
俺が了解を得ようと尋ねると、渚は少しふてくされたように口を尖らせ、そう言った。
「すまん、自分の家だと思って、ゆっくりくつろいでてくれ」
俺はそれだけ言うと、まるで充電が切れた携帯のように意識が暗闇に落ちていった。
***
ゆっくりと意識が浮上するにつれ感覚が戻ってくる。重たいまぶたを開けると、目の前に顔があった。それは見慣れた顔、今まで何度も何度も見てきた幼なじみの顔だった。
「……何してんの? 渚」
俺がそう問いかけると、渚は飛び跳ねるように後ろに下がった。ちなみにこの光景を見るのは今日2回目だ。
「な、な、何にもしてない!! 本当に何にも!!」
真っ赤な顔をして、勢いよく否定する渚。よく見ると耳まで赤く染まっている。……怪しい。何かやろうと企んでいたんじゃないか?
「必死になって否定するところが、自分が犯人だと告げているぞ?」
「本当にまだ何にもしてないんだってば!!」
——ん? まだ? という事はこれから何かするつもりだったという事じゃないか。
「まだって事は、これから何かするつもりだったのか?」
「……そ、それは……その……色々と深い訳が」
渚は、俯きながらボソボソと聞こえないくらい小さな声で呟く。深い訳ってなんだ? もしかして顔に落書きでもされたんじゃないかと思い、俺は洗面台に行き鏡で自分の顔を確認する。
「……別に何も書かれてないな」
少し寝癖がついてるが、それ以外はいつも通りだ。
「本当に何もしてないんだってば」
渚は慌てたように追いかけてきて、俺にそう言う。——それなら何で慌てたんだ? 疑問はつきないが、これ以上追求しても仕方ない。ふぅとため息をつき、部屋に戻り時間を確認するため壁掛け時計を見ると、時計の針はすでに午後11時をまわっていた。
「そろそろ帰らないと、楓さん心配するんじゃないか?」
「う、うん。でも今日はちょっと帰るのめんどうだな〜……なんて」
渚は悪い事をして、その事を親に話すように恐る恐る話しかけてきた。——珍しいな、渚がこんな事言うなんて。まぁ明日は休日でバイトは午後からだから、俺としてはどっちでも構わないんだが。
夕飯の恩もある訳だし、別に渚なら泊まっていったとこで問題ないだろう。
「泊まっていっても別に構わないぞ? ただし、楓さんには連絡しとけよ」
「……ほ、本当にいいの?」
「何だその意外そうな顔は? 今日は夕飯の恩もある訳だしな」
俺がそう言うと、渚は少しがっかりしたような沈んだ表情になる。
「……だよねー、準一はそういう人だもんね」
なんだか、そこはかとなくバカにされてる気もするが、夕飯にめんじて今日は何も言うまい。——ん? そういえば何か大事な事を忘れているような気もするんだが……まぁいいか。