コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 疑問【22】 ( No.78 )
- 日時: 2014/10/05 23:13
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: 2CRfeSIt)
この町の繁華街の一角にある一際目立つ建物。カラフルな電飾で飾り付けられた看板は茜色に染まる空にタイミングを合わせたかのように点灯していた。
「——で、何でゲーセンに来てるんだよ?」
「だから言っただろう? 準一のバイトの時間に支障なく、かつ有意義な時間を過ごすためだ」
俺のバイトの始まる時間が少し遅い時に合わせて、放課後に俺と涼と渚と綾瀬先輩……つまり、この間の昼休みに立てた予定が現実の事となったのだ。ちなみに、渚は今日はバイトが休みらしい。
「それはわかったけど、なぜこのメンバーで来る必要があるんだ?」
「それはもちろん、準一が珍しく他の人を連れてきたからだ。ハッキリ言って、俺は心配してたんだぞ?」
そう言って涼は肩をすくめながら小さく笑う。
「何をだよ?」
「お前、今までずっと俺や新谷さん以外は接点持たなかったし、関わろうともしなかったじゃないか」
確かに涼の言っている事は事実だ。
俺は他者と関わるのは基本的に好きではないし、できる事ならひとりで居たいと思っている。渚は幼い頃から知っているからだし、それに数え切れないくらいの恩がある。主に食料に関してなんだが。まぁ、口では腐れ縁だなんだと言ってはいるが、渚が俺の顔なんて見たくないと言われるまでは一緒に居るつもりだ。
涼は……あれ? そういや、涼とはいつから一緒に居るんだっけ?
「俺はね、嬉しいんだよ。準一もやっと周囲と打ち解けてきたのかと」
「お前は俺の保護者か。いいんだよ。他人と関わるのは疲れるし、面倒だ。綾瀬先輩との事だって、なりゆきでそうなっただけだし、先輩は律儀だから変な恩を感じているだけだ」
先輩は妙に律儀というか、とても真面目な人なので約束した手前断る事ができない性格なのだろう。もう少し早く手を打っておくべきだったが、涼に先手を打たれてしまった。
「バカだね。お前は気づかないのか? ありゃどう見たって、準一に好意があるだろう」
涼はいきなり俺の肩に手をまわして、耳打ちでもするかのように声のトーンを落としながらそう言う。
「やめろ。通行人が変な目で見てるだろうが」
俺は涼の手を振りほどいて少し距離を取る。店の前で、しかも公衆の面前で男同士くっついてたら変な誤解されてしまう。冬なのに暑苦しいし。
「それに、そういうのよくわからんし」
「……えっ!? 準一、お前、そっち系なのか?」
俺がそう言うと、涼は2、3歩後ずさりしながらわざとらしいリアクションをしてみせる。
「違うに決まってるだろ!!」
否定しとかないとネタになりそうなので、思いっきり否定しておく。ってか、この間から涼のテンション高くないか? 普段あまりボケたりする奴じゃなかったと思うんだが。
「こら。いつまで2人で遊んでるの? 綾瀬先輩が困ってるじゃない」
背後からかかる渚の声に気づいて振り返れば、渚のさらに後ろで綾瀬先輩はどうしたらいいのかわからないといった表情で視線をさまよわせていた。
「準一、ちゃんと綾瀬先輩とも話さないと……準一が一番仲良いんだから」
渚のたしなめるような言葉にイマイチ納得はいかないが、理解はした。確かに渚や涼とはこの間話したばかりな訳だし、いきなり遊びにきて放置されたら正直どうしたらいいかわからないだろう。(俺なら迷わず帰るけど)ただ、『一番仲が良い』というのは少し語弊があるわけで……あくまで断りきれなくて、このメンバーの中では接点が多いというだけなのだから。
「そうだぞ。ちゃんと準一が話しかけてやらないと」
「いや、今渚に怒られたのは主に涼のせいだからな?」
涼がしたり顔でそんな事を言ってきたので、ため息混じりに反論をしておく。どうしてこう面倒な事になったのか頭を悩ませながら俺達は店の中へと足を進めていった。