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疑問【24】 ( No.80 )
日時: 2014/10/05 23:04
名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: 2CRfeSIt)

「んじゃあ、俺と新谷さんペア。準一と綾瀬先輩のペアという事で」

 グーパー(グーかパーを出してグループを決めるやり方。主にチームわけの時なんかにやる方法)で2人ずつにわけた結果、そういう事になった。

「むぅ、どうしてパー出しちゃったんだろ……」

 渚は納得いかないといった表情でそんな事を呟いていた。たかだかゲームのペア決めくらいで何が納得いかないかわからないが。

「き、清川君!! よ、よろしくお願いします」

「えっと、先輩? そんなに気張らなくて大丈夫です。遊びなんで、軽い気持ちでいきましょう」

 綾瀬先輩は声がうわずっていて、とても緊張しているみたいだ。たかだかゲームなんだからそんな緊張なんかする必要なんてないんだが、何事にも真剣に取り組んでしまうのが先輩なのかもしれないなと納得。

「ふふふっ。準一、そんな甘っちょろい事を言ってて良いのか? 敗者には罰ゲームを用意しようと思っているんだが」

 そう言って涼は不敵に笑う。
 あれは何かを企んでいる感じだな。一応、内容ぐらいは聞いておくか。

「一応聞くが、その罰ゲームとやらはなんなんだ?」

「それは、敗者に何でも1つだけ願いを聞いてもらえる権利だ!!」

 涼の気合いがこもった(であろう)一言に俺も渚も先輩も沈黙してしまう。もちろん呆れてだ。
 ……アホか? 星の入ったボールを7つ集めて出てくる緑色の龍じゃあるまいし、リスクが高すぎる。
まぁ、本気ではないんだろうが。

「ちなみに、拒否権は認められない」

「何だよその法的拘束力は? 大体、2人だってそんなのやる訳 —— 」

「やります!!」

「やる!!」

 同意を得ようと2人がいる後ろに振り返れば、先輩と渚が勢いよく賛成の返事をした。
 ——はぁ、心底面倒だ。俺は心の中で深いため息をついた。
 エアホッケーとは、卓球台のような台の上で空気の力を利用しパックと呼ばれる平べったい球を浮かして、それを打ち合い相手側の陣地にあるゴールに入れるゲームだ。まぁ主に反射神経とか瞬発力が問われるゲームだろう。
 俺は運動神経がずば抜けて良いという訳ではないが、それなりに自信はある。問題は先輩の方だろう。
 単純な知力の勝負であるなら他を寄せつけないであろう先輩だが、こと運動、こういうゲームではまったくの未知数だ。俺の予想ではあまり得意そうには見えないが。

「しかし、あの2人が相手となると……」

 対戦相手である渚はハイスペックな人物である。
 運動神経は抜群、料理もできるし、人懐っこい性格のせいか人望もある。(まぁ、始めの情報以外はこの勝負にあまり関係ないのだが)ペアを組む涼も、ある程度人並み以上に何でもこなしてしまう奴だ。まぁ、性格はちょっと変わってるんだけれども。

「清川君。頑張りましょうね」

「えぇ、まぁ適当に頑張りましょう」

 俺は先輩の言葉に適当な相槌をうつ。
 こんな面倒な事はさっさと終わらせてしまうにかぎる。バイトの時間も迫ってきてるわけだし。接戦になればなるほど長くなってしまうからな。時間は有限な訳だし、この試合にロスタイムは許されないのだ。そんなこんなで試合開始。

「ふふん。準一、悪いが勝たせてもらうぞ」

「涼、今日はいつもよりはしゃいでいるよな? 何かあったのか?」

 俺は先行である涼、渚チームから打ち込まれたパックを打ち返しながら涼に尋ねてみる。普段は感情の起伏があまりない涼が今日はやけに饒舌で、はしゃいでいる気がする。

「俺だって人間だ。楽しい時くらいある」

「……ふーん」

 さらに打ち返されたパックをタイミング良く、かつ思いっきり打ち返す。——ガコンッ!!

「あぁ!?」

 俺の会心の一撃で打ち返したパックは、渚の悔しそうな言葉とともにゴールへと吸い込まれていった。

「清川君!! す、凄いです!!」

「いや、別にこれくらいは……」

 たかだか1点入れたくらいでこんなに褒められても困る。 先輩は人を褒めるハードルが低すぎる。きっと先輩に下の兄弟なんていたら甘やかしまくる事だろう。そんなどうでもいい事を考えてたせいか、渚の鋭いスマッシュで速攻で同点にされしまった。

「準一、よそ見してると負けちゃうよ?」

「……うるせーよ」

 俺としては、早く、適当に終わらせるのが目的な訳だから、別に勝ち負けにこだわる必要なんてない。『いい勝負だったね』くらいが理想的だ。

「清川君!! ぜっったい勝ちましょう!!」

 俺の脇で先輩の力強い言葉が聞こえてくる。……何か、手を抜くとかやりにくいな。