コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 疑問【26】 ( No.84 )
- 日時: 2014/10/05 22:55
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: 2CRfeSIt)
「おせーぞ!! 準一!! 遅刻の遅刻とはいい度胸だな」
風見鶏に着くと、マスターが凄い剣幕で詰め寄ってきた。なまじガタイがよいせいか、厳つさが倍増している気がする。
「すいません。気抜いてました」
俺は素直に腰を折り、頭を下げる。『まだ大丈夫』って考えは危険なもんで、『まだ大丈夫』は『もう危ない』と今日、身をもって体験した。朝のあと5分で二度寝したら、とんでもない時間になってたというアレと同じだろう。
「まぁ、今日は暇だったし、さらにヘルプもきたから問題なかったけどよ」
そう言ってマスターは目線をホールに移す。俺もあとを追うように視線をホールにやると、そこには黒いフリルのスカートに、うち(風見鶏)の制服であるシャツを着ている女の子がいた。
ツインテールと言うんだろうか? センターの高い位置からわけて、二つ結びにしている。ちょうど接客中で後ろを向いており顔は見えない。後ろからだとよくわからないが、身長は低めで髪型も相まってまるで子供のようだ。
「新人ですか?」
俺の問いかけにマスターはゆっくりと首を横に振る。
「俺の姪だ。クソ生意気な奴だがな」
マスターは本気なのか冗談なのかはわからないが、苦々しくそう言う。マスターに姪なんて居たのか。さぞかし厳つい……おっと、男っぽい子かもしれないな。
「おい、邪魔だ。どけ」
マスターとの話しに気を取られてたせいか、小さな女の子が俺のすぐ後ろまで接近していた事に気付く事ができなかった。
「……あぁ、悪い」
女の子なのにというのは偏見かもしれないが、そのえらく乱暴な言葉使いに驚いていると、女の子は俺の顔をジロジロと見つめてきた。
「お前が、清川準一か?」
「そうだけど?」
「ガッカリだな。岩男がえらく褒めるもんだから、どんな男かと思えばこんなさえない男だとは……」
女の子は今にもため息でもつきそうなくらいに心底ガッカリしたと言いたげな表情だ。ちなみに岩男というのはマスターの名前だ。しかし失礼な奴だな。
初対面の相手にいくらなんでもその言いぐさはないだろう。
「お前、失礼な奴だな」
「遅刻してきた奴に発言権はないな」
初対面から、いがみ合っているとマスターが割って入ってきた。
「やめやめ。お前たち、まだ仕事中だぞ? ケンカなら仕事が終わった後に好きなだけやれ」
「あいにく、こんなやつとケンカするほど私は暇じゃない」
と女の子。
「同感だ。俺もちびっ子と戯れるほど暇じゃない」
と俺。
「誰がちびっ子だ!?」
「心当たりでもあるのか? ちびっ子代表」
女の子は、こめかみの所に青筋でも見えそうなくらい顔が引きつっている。ちょっと大人気ない気もするが、こういう生意気なお子様にはこれくらい言っておいた方がいい。
「っつ!! 侮辱……。清川準一。私にそんな事言って後悔するなよ」
「あいにく、後悔するような事はしてない」
「お前たち!! いい加減にしないか!!」
売り言葉に買い言葉。
ますますヒートアップしてしまった俺達はマスターの一喝によって店から追い出されてしまった。