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- Re: 意地悪彼女とツンデレ彼氏の恋日記。【150突破あざます!】 ( No.22 )
- 日時: 2014/01/18 23:43
- 名前: 八田 きいち。 ◆8HAMY6FOAU (ID: nA.Y1kcV)
……ピンポーン
インターホンを押す手が柄にもなく震えた。
それほどあたしは緊張しているということだろうか。
ぎゅっと握った拳が汗ばんでいる。
(涼ちゃん、あってくれるかな)
動悸が早くなるのがわかった。
本当にらしくないぞ、あたし。
『はい、……どちら様』
「あっ、すみません。涼くんのクラスメイトの神谷真月といいます。涼くんいますか?」
インターホンから聞こえた声が涼ちゃんのものじゃないとわかって、
そう答える。インターホン越しに『あぁ』と言う声が聞こえた。それからぶちっと回線が切れて、ドタドタと階段を降りる音が聞こえてきた。
ガチャ、とゆっくりドアが開けられる。
「神谷さん、どうぞ」
「……どうも」
出てきたのは、男の子。
綺麗な黒髪に綺麗な顔立ち。
(弟……?いや、似てなさすぎる)
涼ちゃんの弟の想像図はもう少し可愛いぞ。
不思議そうに見ていたのがばれたのか彼はあたしを玄関に通しながら言った。
「俺は白沢 亜樹(しらさわ あき)です。涼の義理の弟です」
「え、義理……?」
だから似ていないのか。というか、それよりも。
(涼ちゃんの両親って再婚してたんだ)
別に珍しくもないのだろうけど、本人から聞いていない分ちょっと腑に落ちない。言って欲しかったわけじゃないけど、それを涼ちゃん以外から聞くなんて。
(って、なんだそりゃ。)
自分の思考がわからん。思わず頭を抱えたくなる。
「神谷さん、こっちです」
「あ、はい」
「それから、俺、神谷さんより年下なんで敬語いらないです」
「あ、うん。わかった」
そう返事をすると、亜樹くん(って呼んでおこう)は表情を変えずにあたしの前を歩き出した。
(なんというか、亜樹くんって涼ちゃんと正反対というか)
しっかりしてそう……なんて言うと涼ちゃんに怒られるかな。
そんなことを思って、少しだけ気が落ちる。
今から涼ちゃんに会うと思うと少しだけ、怖い。
何が怖いって、……。
『 さようなら 』
_____________そう言うあの子と涼ちゃんが重なった。
「ここで待っててください。涼を呼んできます」
「ごめん。ありがとう、亜樹くん」
「……いいえ」
案内されたリビングで、
だされた紅茶を一口飲んだ。
亜樹くんはやっぱりしっかりしていた。
パタンとリビングの扉を閉めて出て行った亜樹くんを見送って、
いよいよ緊張してくる。
(あぁ、怖いなぁ……)
本当におかしい。今日のあたしは、昔のあたしみたいに『 弱い 』。
不安で不安で仕方ない。怖くてたまらない。
そんなあたしは卒業したんだって思ってたんだけどなぁ。
(これもみんな涼ちゃんだから、だよね)
それほどあたしは、
涼ちゃんのことを____________
ガチャ、とリビングの扉があいた。
そっ、と誰かが入ってくる気配がした。
「……真月。……、」
「ごめんなさい」
涼ちゃんが何かを言う前に、あたしは謝った。
すると、涼ちゃんが小さく「……なんで」とつぶやいた。
後ろを振り向けない。
動けない。
声を絞り出すことだけしかできなかった。
「……涼ちゃんが、……涼が怒ってるのは分かるから。それから、それはあたしのせいだって」
「っ……」
涼は何も言わなかった。
怖い。
震える声をごまかすように少しだけ明るく言った。
「いや、涼ちゃんがさ!あたしのこと嫌いなら……別れた……ほうがいいとか、思ってさ」
「……は?」
聞こえた涼の声。
なんて、言うのかな。
正直、涼はあたしのことを好きでいるって思ってる。
だけど、好きだからって付き合い続けるなんてことはない。
だって、その人と付き合うことで自分が傷つく相手とかと無理して付き合う必要なんてないんだから。
『大嫌い』って言った涼の顔は確かに傷ついていた。
「本当にごめん。なんで涼が怒ってるとか、あたしは……わかんないけど、だけどあたしが悪いはずだから、無理して、あたしと付き合う必要ない、よ」
_________________怖い。
「……」
___________________沈黙が、怖い。
涼が何を考えてるとか、そういうの。
なんか、すごく。かっこ悪い。
おいおい、あたしのクールキャラどこ言ったよ。
キャラが行方不明だよ。
一人の人間に感情を左右されるなんてことは、
ないはずなんだよ。あたしは。
「…………馬鹿、なんじゃねぇの」
「……え?」
聞こえた言葉に驚いて振り返る。
そこには、涙で顔をぐしゃぐしゃにした涼が立っていた。
「え、涼ちゃ……」
「なんでっ、そんな……そんなこと言うんだよっ!!」
涼がなんで泣いてるとか、
なんで怒ってるとか、
あたしにはわからない、けど。
「真月の馬鹿ぁ……ぅっ、」
あたしのために泣いたんだな、って。
そう思ったら、胸がきゅって締め付けられる。
________________________あぁ、愛しいなぁ。
「っ、真月……」
「ごめん、ごめんね……涼」
思わず抱きしめた体は思ったより男の子っぽくて、
それから暖かかかった。
「ぅう、なんだよ。こういうのは、男からやるんだよぉ……ひぐっ」
「いや、ごめん。我慢できませんでした」
「うっせぇ……ばかやろー」
そう言って、涼の腕があたしの背中に回るのを感じた。
一層ぎゅうって引き寄せられて、涼の匂いがあたしを包み込む。
「……お前は、悪くねぇの」
「え?」
抱きしめたまま、あたしの耳元で涼が言った。
「お、俺が……健太にヤキモチ焼いたから……」
「……え?や、ヤキモチ?」
予想外の言葉にあたしは思わず聞かえてししまった。
いま、なんてった?
健太……だって?
「え、ちょっとまって。なんで健太が?」
「だって、仲いいじゃん。お前ら」
「それは、涼もじゃん」
「違う!あれは俺をからかって楽しんでんだよっ」
「えー……」
それは確かに否定できない。
ちょっとだけ苦笑すると、涼があたしを抱きしめる腕によりいっそう力をこめた。
「それにお前ら、抱き合ってた……じゃん。」
「は……」
涼の言葉にこんどこそ驚いた。
「え、い、いつ?」
「……昼休み終わって、健太に呼び出されてた時」
「健太に呼び出され…………」
腕の力を緩めて、あたしにむすっと拗ねたような瞳を向ける涼。
あたしは今日のことを思い出す。
あの時、健太に____________
- Re: 意地悪彼女とツンデレ彼氏の恋日記。【150突破あざます!】 ( No.23 )
- 日時: 2014/01/19 00:21
- 名前: 八田 きいち。 ◆8HAMY6FOAU (ID: nA.Y1kcV)
- 参照: ついに、終わった(゜∀゜)!
『真月せんぱい、メアド教えてくださーい』
『……そんなことであたし呼び出したんか。しかも涼ちゃんまで先に帰らせて』
『だって、おれも先輩と二人になりたいですしー!』
にやっ、と面白そうに笑みを浮かべる健太に私は『はあ』とため息をもらした。ポケットから携帯を取り出して、健太の携帯に赤外線でメアドを送る。
ピロリン、と完了を知らせる音が鳴った。
『へへ、あざーす!』
『はいはい。無駄にメールしないでよね』
『無駄とか、酷いっすねー真月せんぱい』
むぅと唇を尖らせた健太を見て笑うと、あたしは健太に背を向けて歩き出した。
『じゃ、またね』
『あ、せんぱい待って……ぅわぁ!』
『、おわぁ?!』
健太に呼ばれて振り返ったと同時に体制を崩したらしい健太があたしにとびついてきた。なんとか受け止めて、健太の背中をポンポン叩いた。
『だいじょぶ?健太』
『っえ!ふぉぁ!!す、すみません!』
珍しく真っ赤になりながら健太が謝る。
あたしは『気をつけてよ』と言って、教室にもどった。
「……あれか」
「っ、やっぱ心当たりがあんのか!」
短い回想を終えて呟くと、涼はまた泣きそうな顔をした。
あたしは慌てて否定という弁解をはじめる。
「違うって!健太が転びそうになったから受け止めただけで……」
「……ほんと?」
そう言うと、涼は不安そうな顔から少しだけ頬を緩めた。
それを見てあたしも少しだけ微笑んだ。
「……ごめんな。嫌いとか、言って」
「ううん。いや、あたしもごめんね」
「真月は悪くないだろ?俺が全部誤解してて……子供みたいに嫉妬して、ちょっと考えれば真月はそんなことするはずないってわかんのに……」
しゅん、と肩を落として落ち込む涼の頭を自然と撫でてた。
「ううん。事故だったけど、誤解されるようなことしたあたしも悪いからさ。涼はそんなに気にしなくてもいいよ」
「……真月、……あり、がと」
「ん。」
小さく笑った涼。
あたしもその顔にほっとして、微笑んだ。
「じゃ、お邪魔しました」
「お、おう。本当に送らなくていいのか?」
「だいじょぶだよ、そんなに暗くないしね」
「そ、そっか」
涼が少しだけ寂しそうな顔して、
あたしもちょっと苦笑する。
名残惜しいけど、また明日会える。
「バイバイ、涼」
「バイバイ!また来いよ!」
「うん」
涼ちゃんに見送られてとびらを閉めた。
あたしはふぅーと息を吐き出しながら門をくぐった。
「話、終わりました?」
「ぅわ!?あ、亜樹くん?」
門に寄りかかっていた亜樹くんは、
少しだけ寒そうにパーカーのポケットに手を突っ込んで立っていた。
あたしと涼の話が終わるまで外で待っていたのだろうか。
夏の終わりのこの時期は夜は寒い。
まだそんなに暗くないとはいえ、涼しいだろうに。
「ありがと、亜樹くん」
「……いえ。じゃ……」
「あ、待って」
「……何か?」
「手、だして」
「?」
呼び止めた亜樹くんは素直にポケットから手を差し出す。
その手に、あたしは飴を置いた。
「……いちごミルク」
「あげる。お礼だよ」
そう言って、あたしは亜樹くんに手を振って白沢家を後にした。
「……神谷真月さん、か」
そう呟いた亜樹は彼女からもらった飴を、
そっとポケットにしまった。
ヤキモチ焼きの僕は。後編end
『初めてのケンカだって、君との大事な思い出だって』