コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.180 )
- 日時: 2014/11/15 17:10
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
♪-♪-
曲が終わるといつものように歓声がわき上がる。
もう日常茶飯事と言った光景だ。
「『ミラ』、それはくじら座の色の変わる不思議な星のこと。
この曲は仲間達を引き合わせた不思議な縁について歌ったものだそうです。
いや〜相変わらず痺れました!!あのサビなんて…CD絶対買います!
『ミラ』が収録されたCDアルバム『ミラ』の発売日は明日!!皆さんもぜひお買い求めください!!
以上、ItemMemberでした!!」
再び拍手とともにスタジオから退場する。
これで控室に入り、化粧を落とすまで気が抜けない。
何時誰に見られるか分からないのだから。
毎度ItemMemberが登場すると、テレビ局前に人混みが出来て警備員が忙しそうにしている。
実に申し訳ないことをしたと思う。
私達もよく聞かれることがあるが、その際には関係者ではないとシラをきり通す。
あくまで仁科の親戚、という顔をする。
ここまで手間をかけるのは仁科の指示と、そしてアリスが納得する様に作られているからだ。
「あ〜気持ちよかった!!」
歌うと気分がすっきりする。
気持ちよくなれる。
悩んだ時、困った時、悲しい時、嬉しい時。
歌を歌えばよかった。
ただそれだけで何事も満たされた。
私は知っていた。
自分を喜ばす方法も、怒りを抑える方法も、知っていた。
どんな時も歌を歌うだけで何事も解決した。
歌えば何もかも丸く収まった。
人から変な目で見られても、歌があれば何も問題がなかった。
歌がなければきっと今の私はいない。
私を私たらしめるもの。
紛れもなくそれは歌としか、言いようがなかった。
まるで歌で出来ているようだ、と我ながら思う。
友達もいなかったし教員も性格のため反感ばかり買っていた。
知らない親戚の嫌な態度も嫌がらせも。
でも歌があったから。
生活費を忘れたふりして、振り込まれなかった時も。
困りはしなかったが、とても悲しかったっけ。
6年前の歌を歌ってばかりの私には遊ぶ金もいらなければ、楽譜を買う金もいらなかった。
だから困らなかった。
あれも経験だと今なら思える。
困った時助けてくれた人なんていなかった。
皆が薄情って訳じゃない。
周りの空気やそう言ったものが、自然とそうした環境を作り出しているのだと納得したものだ。
あの時期を思い出すと、まだ昨日のことのようだ。
歌さえあればどんな辛い環境も。
いや、違うか。
圭達に会えると思ったから歌えたのか。
どんな辛い環境も今じゃなんてことない。
私は圭達と一緒にいるのだから。