コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 秘密 ( No.232 )
日時: 2015/07/04 17:07
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

「勝負?」

「私達がマリーの腕を認めさせられたら私の勝ち。
認めさせられなかったらもう私はマリーとは言葉を交わしません。
それでいかが?」

「下らない!今日はもう帰らせてもらう!私は忙しいのでな。
夕餉の時間までにはきちんと反省しておけ。」

「あらあら意気地がないのですね。
あれだけの口を叩いておいて勝負もせずに逃げるのですか。見た目通り器の小さい男なんですね。」

ずっとそばにいたからなのか…

分かる。

何を言いたいかなんて。

「悪いが私は忙しいのでな。お前らの戯言に付き合っている暇などないんだ。」

今日はそれで終わった。

アリスは授業中はどこかに行ったのか姿を現さず、家に戻ってもアリスはいなかった。

出て行ったのか、と一瞬思った。

再び夕餉の時間になり、お父様がやってきた。

「反省したか?」

「…」

頷こうとした。

しかしそこをアリスの声が遮った。

「再び、勝負を申し込みに来ました。」

気が付くと食堂の入り口付近でアリスが息切れしながら何かの書類の様なもの持ち、佇んでいた。

「下らないと言ったのを忘れたか?」

「では何故…Spring Concertの会場の手配をして下さったのですか?」

その瞬間強張った。

「今日1日の時間を使って灘家の行ってきた契約、大方洗っておきました。すると分かったんです。
お父様がいかに軽音部に力添えしてきたか、分かったのです。」

父の顔に驚きが広がる。

目に見えて分かるほどに。

「生憎私の父も多少名の知れた人でしてね。私は父を大層憎んでおりますがこんな時には役に立つのです。
名前を伏せて、顔を出さずとも何をしていたか分かりますよ。
ちなみに私の父とも契約を交わした跡があります。」

彼女は相変わらず肩で息をしていた。

けれど顔には不敵な笑みを浮かべていた。

「それでこんな話をしてまでお願いしたかったのですが、勝負受けて頂けますか?」

しばらくの沈黙が続いた。

何をしようとしているかちっともわからなかった。

「…分かった。」

やがて重々しく口を開き、しわがれた声で告げた。

「有難うございます。
それで勝負の内容は仰ったように。文化祭のステージで。」

そうやってニッコリと笑った。

そのまま食堂を出て行こうとしたがぴたりと足をとめた。

「それと…勝負の時まではお暇させて頂きます。
もし私が勝ったら灘家が所有するいくつかの別邸。この町の中にある別邸の1つに住まわせて頂きます。」

娘さんに危害が加わるといけませんから、と彼女は小さく呟いた。

「それでは御機嫌よう。」