コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.245 )
- 日時: 2014/02/11 17:53
- 名前: 雪 (ID: Omr4T4uD)
アレクシスの恋もみのり、退屈な日々が続いた。
父は名前だけだしてアナの破婚を後押しした。
あれは賭け。
ただの暇つぶしの道具。
「ふぁ〜…」
気だるい欠伸の声が牢の中を小さくこだまする。
前と違ってとらえる理由が無いのか食事に薬は盛られていなかった。
それどころかお菓子などが牢の中にあまりにも不釣り合いに置かれていた。
退屈を紛らわす様に棒付きキャンディーを舐めた。
コツッ。コツッ。
牢の廊下で足音が静寂を破るように響いた。
「なんだ…息子の方か。」
吐き捨てるように話す。
「靴の鳴らし方から匂いまで父親そっくりになってきたな。」
父の方かと思った。
「貴様が来たという事は…帰るのか…」
冷たい声で続ける。
ここにいると体だけでなく心まで凍りつくように冷たくなる様な気がしてならない。
母はここで私を生んだと聞いた。
こんな岩室で…
そして私もここに囚われている。
「…皮肉なものだな。」
ペロリッと再び飴を舐める。
甘い果実の味がした。
「その…アナのことだが…感謝する…」
「分からんな。」
冷めた目でアレクシスを見つめる。
その目は何もかも写していながらもなにも見ていない様な…そんな目をしていた。
「これはただの暇つぶしだ。」
今回は結果が結果なだけ私はアレクシスを救った様に見えるだろう。
だが私はアナを知らない。
もしかするとアバック家で上手く行っていたかもしれない。
幸せだったのかもしれない。
アバック氏を愛していたのかもしれない。
そうすればアレクシスのやることなど平凡で幸福に満ちた2人の生活に亀裂を入れかねない。
はた迷惑な行動なのだ。
「確率は五分五分…むしろそれ以下だな。
それでお前が上手く行くか見て楽しんでいたのだよ。」
むしろ私はそんな勝つ可能性の少ない賭けにアレクシスの背を突き飛ばしただけだ。
「だから礼を言われる覚えが無い。」
上手く行ったところで私の監視がある。
そのために結局2人は離れ離れなのだ。
アナを同伴させるというのも…アレクシスの頭では思いつきもしないだろう。
結局どちらに転がろうと何ら変わらなかった。
「…行くぞ。」
そういって重い腰を挙げた。
夜はまだこれからだ。