コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.254 )
- 日時: 2014/02/21 19:21
- 名前: 雪 (ID: LQ38T2Vh)
食堂にマリー達を呼ぶと圭が入って来た時と同じように夢心地な顔をした。
「おいしい!!」
「テリーヌにオムライス…ドリア!?」
「どうしてこんなレシピ知ってんだよ!!?」
「えっと…マリーの部屋に合った本を読んだだけ。材料が無駄にたくさんあるから。」
ここにはなんでも揃っている。
冷蔵庫を開けるだけで高級食材が沢山並んでいた。
食事が一段落すると食器を片づける。
アリスの意外な特技だった。
皿を洗い終わると談笑する4人から離れてテラスに出る。
夜風は冷たい。
「ありがと、圭。」
暫く2人の間に何も会話は無かった。
けれど動こうとしない圭を見てようやく口を開いた。
「さっきの話…誰にも話したことなかったけど…話したら少し気が楽になった。ありがとう。」
違う。
お礼が欲しかった訳じゃない。
でもそんな言葉も無に消えて行った。
「…アリスが…自分の話をしてくれたから…嬉しかった…」
アリスは横目で圭を確認するとふっと笑った。
「分かってたんだ…最初から圭達と同じ立ち位置には立てないって。
それでも…例えいつか消える夢だとしても…偶然でも…一緒にいられて楽しかった。」
悲しい言葉だった。
ずっと一緒にいたいっていうアリスの本心が見え隠れした。
「私は何時かここからいなくなる。それが明日か来月か何年も先か…分からないけど。
私は父の道具。そう言う風に生まれてきた。それがたとえ何を指していても…それ以外に私が生まれてきた意味なんてない。」
ここにいるアリスを完ぺきに否定する。
言葉だった。
・・・それ以外に生まれてきた意味なんてない・・・
「そんなことない!!」
えっ、とアリスの小さな口から驚きの言葉が零れた。
「アリスは他の誰のものでもない。アリスだけのものだ!!」
ただ感情的になっていた。
それでもアリスの力になりたかった。
アリスの傍にいたかった。
「大人はみんな勝手なことを言う。でも僕たちだって生きて…考えてるんだ!
アリスが生まれてきた意味なんて知らない。生まれてきた意味なんて…後で考えればいい。」
息が荒い。
アリスはどんな顔をしているだろう?
ここからじゃ顔も見えない。
「でもこれだけは言える。アリスは決してお父さんのためだけに生まれたんじゃない!!」
たとえ生まれが違おうとも。
アリスと出会える自信があった。
「この出会いは運命だから。たとえ生まれが違っても…絶対にアリスを見つける。」
例え何度アリスが目の前から姿を消そうとも…
地球の反対側に行ったとしても。
必ず見つけ出す。
「僕はその声を見失わない。何度だって見つけ出してやる!!なんどでも!!」
ハァハァ、と荒い圭の吐息だけが響く。
つい感情的になって怒鳴ってしまった。
顔を上げようとしたその時。
温かい何かが覆いかぶさってきた。
「…アリス…?」
おそるおそるアリスの背中に手を伸ばす。
そっと抱きしめ返す。
手のひらにアリスの美しい金髪の感触と温かい体温が伝わってきた。
「…ありがと…圭…」
肩にアリスの涙が落ちる。
また痩せた。
背も低くなった。
これ以上何を求めるという。
これ以上アリスからなにを奪うという。
しばらく圭を抱きしめていたらやがてそっとアリスの方から離れた。
「…やっぱり私には圭の言う事は分からない…」
そう静かに彼女は告げた。
驚きはしなかった。
「…でも…見つけてくれるって言った時、本当に嬉しかった。
前に言われた時もそうだったけど。やっぱり…改めて言われると凄くうれしい!」
瞳にはまだうっすらと涙の膜が張られている。
それでも彼女は笑った。
まだまだ危なっかしい。
これからもきっと沢山の危険がアリスを襲うだろう。
それからすべて守れるって言えるほど傲慢ではない。
それでも何か出来ることならやりたい。
一緒にいれば少しでも危険から救えるかもしれない。
というよりか一緒にいたい。
例えリンに恋をしてるとしても。
だから。
何をしても。
どんなに時間をかけても。
アリスの友達になりたい。
どうせ。
叶わない恋だから。
アリスの近くで。
この想いを隠しながら。
友達になりたい。