コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.258 )
- 日時: 2015/07/04 18:15
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
暫くテラスで涼んでいた。
中にはいる気はあまりなかった。
まだほのかに赤い目元を他の奴らに見られたくなかったのだろうか。
…圭を抱きしめたことを思い出すと今でも顔が赤らむ。
暫くは頭を覚ましておきたい。
圭はもう自宅に戻っただろうか。
リンは寮。
マリーはお屋敷。
圭は自宅。
私は別宅。
皆見事に住んでいるところが違う。
その後マリーとも言葉を交わし、誕生日が3月3日であることを知った。
その時私の誕生日のことも告げた。
圭はまた後日に聞こう。
もしまだ帰っていなくてもさっきの今じゃ聞くに聞けない。
「アリス、帰るよ。」
ほんと…
何時も私を驚かすのはお前たちだ。
その中でも圭はずば抜けている。
「…うん、分かった。また今度ね。今度はショートケーキが良いな。」
顔は決して圭に見せない。
まだ目元が少し赤い。
「アリスって誕生日いつ?」
さっきの2人に聞いたのだろうか。
「…知らないんだ。誕生日。」
簡潔に答える。
あまり言葉を交わしたい気分ではなかった。
それはもちろん交わして喜んでいる自分がいる。
内心万歳だ。
でもこの顔はみられたくなかった。
散々目の前で泣いておいて何を言ってるんだろう。
「…圭は?」
「9月2日。」
6月1日に9月2日に3月3日。
見事に分かれている。
「3月、6月、9月。このノリじゃ私の誕生日は12月になりそうね。」
クスリ、と笑う。
「…アリス」
私は圭の言葉を遮った。
今日はいろんなことがありすぎた。
顔が合わせられない。
「そろそろ帰らないと…警官に補導されちゃうよ?」
「アリス…」
「もうこんな時間。明日も朝早いでしょう。」
無理矢理そう言うと諦めたのか圭は出て行った。
それとは入れ違いにアレクシスが入ってきた。
今日はやけにいろんな奴が訪ねてくるな。
「…いいのか?」
「…余計な御世話だ。」
それ以降アレクシスは追及しなかった。
「あの3人…いい奴だな。」
「…当然だ。親友だと、この私が認めたのだから。」
親友。
その言葉を聞く度、見かける度馬鹿にしてきた。
けれどあいつらこそが親友だと私はいつしか気付いた。
「俺は驚いた。お前にあんな友が出来るとは思わなかったからだ。」
「…私も驚いた。」
6年前、私達はどうやって出会ったのだろう。
歌って遊んでいるのは覚えている。
けれど出会いと別れについてはどうも記憶があいまいだ。
反応がいまいちな私を尻目にアレクシスは時計を確認した。
わざとらしくブランド物の時計だ。
「…私も帰るとしよう。」
「そうしろ。というかとっとと帰れ。」
考えるとこんなに長居したのは初めてだった。
それほど時間が経っていた。
「言われなくてもだ。」
冷めきった兄弟だ。
「…大事にしろ。」
出て行き際にアレクシスはそう囁くように告げた。
直後、テラスの扉はしまった。
私は1人で静かに呟いた。
「言われなくても…分かっている…!」
その声は小さかったけれどハッキリとした意思が込められていた。
私の言葉は静かに闇夜へ消えた。