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Re: 秘密 ( No.274 )
日時: 2014/03/30 15:10
名前: 雪 (ID: DNCcZWoc)

「リンの言う通りかもしれない。」

彼女は言った。

「諦めるなんて…できることじゃないかもしれない。」

痛いほどに伝わってくる。

アリスがいかに圭を好きなのか。

どれだけ自分の気持ちを抑え込んでいるか。

圭を好きにならない。

きっとそれがアリスの中で出された結論。

きっとそれはアリスの為にじゃない。

圭の為に。

彼女はそう言ったのだろう。

「叶う訳の無い恋…でも私は圭が好きだって認める。その上で私は圭との恋を諦める。」

…一緒にいると危険な目に合わせるから。

声には出していないのに聞こえたアリスの声。

圭が好き。

好きだからこそ諦めなくてはいけない恋。

彼女は踏ん切りをつけようとしている。

圭と。

圭を好きな自分自身に。

こう言った時。

どうすればいいか分からない。

そこが圭との違いだろうか。

圭ならきっと声を荒げてアリスを叱るだろう。

もっと自分を大事にしろとか、何時か必ず助けるから、とか。

世迷言だと思える様なそんな歯の浮く様な台詞。

でもそんな言葉でもアリスに語りかけ、実際には救ってきた。

何も言わないより、ずっとマシだ。

何もしないより、救われないのを分かってでも言葉をかけることのできる。

そんな圭と。

自分との違いはこう言ったところにあるのだと思った。

叶わない、と思った。

圭との恋を諦めても…勿論自分に目を向ける訳が無い。

それでも…

アリスを好きになった1人の男として。

少しでもアリスの力になりたい。

そう思うのに何のためらいもなかった。

アリスが好きだからアリスの好きな男に近づきたがるのは。

アリスの好きな男を越えたいと思うのは可笑しいことじゃない。

絶対に自分に振り向かないと分かって。

それでもせめて振り向かせる努力をしても罰は当たらない。

「今の俺にはアリスを助けることは出来ない。」

でも…

「それでもアリスのことが大事だって思うのは俺だけじゃない。
…それがアリスの出した答えなら俺は止めない。でもそのことは忘れないでほしい。」

何言っているんだろう。

何を言えばいいか分からないからって変にも程があるだろう。

それでも彼女はゆっくりと微笑み、笑った。

「ありがと、リン。」

なんだか少しだけ圭とならべた気がして嬉しかった。