コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.286 )
- 日時: 2016/04/09 00:50
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
アリスが自分のことを話した。
今まで話さなかったのに理由はあるはずだ。
きっとそれを知ったら巻き込んでしまう…とかだろう。
もう巻き込まれる準備は出来ているというのに。
それは確かに違う世界で行動の1つ1つが命を落としかねなくなるほど危険だという事も分かっている。
だけど。
だからといってアリスは見殺しに出来ない。
普通の女の子として生まれてきたアリス。
けど血筋によって彼女はずっと監視下に置かれていた。
普通の女の子の様に過ごすことを許されずに生きてきた。
そんな扱いをされているのを知っておきながら目をつぶるなんてできない。
そう言った闇を拭い去らなければ、彼女が心から笑う事は無いだろう。
自分の眼にはただ1人の女の子が自由も、笑顔すらも奪われているようにしか見えない。
6年前、アリスにも言われたことがあった。
・・・お前は優しいし…良い奴だな!・・・
でも自分自身にすれば優しくなんてない。
いい奴なんかじゃない。
まったくもって違う。
もし本当に僕が優しくていい奴ならアリスをそんな目に会わせはしない。
現に自分は1人の女の子すら助けられていない。
不当の扱いを受けているのにリンの様に声を荒げることも出来ずにいた。
アリスはよく自分のことを話す様になった。
でも話すたびに彼女は少しだけ清々しい顔をするが、やはりどこか思いつめている。
話させることに少し胸が痛んだこともあった。
でも話さなければ何も分からない。
そう思ってきた。
けれど聞いたところで何もしてあげられていない。
まるで自分の興味本位で聞いているだけだ。
でも誰にもすがらない。
・・・ヒーローなんて頼るよりも自分がこうしたいって思う事やったら?・・・
6年前のアリスの言葉。
今思えば小学生らしからぬ言葉だ。
彼女は神やヒーローなんて非現実的なものにすがらない。
まだヒーローなんてものに憧れていた様な年頃だった自分にはその言葉の意味は分かりかねた。
…アリスを助けたい…!
その気持ちだけは。
不思議とずっと変わらなかった。
♪-♪-
アリスの歌声。
最初にその歌声を聞いた時。
心を奪われたというのはまさにこう言う事なのだろうと実感した。
「オッケー!今日はこれで終了!!」
「どうした、圭?」
歌ったせいか少しだけ疲れた顔をしていたが彼女の顔に笑顔はあった。
でも心からじゃない。
彼女は再会したばかりの頃は表情をほとんど持たなかった。
それがぎこちなく笑うようになり…次第に心を開いていった。
けれど違う。
まだ彼女の笑顔には霧の様なものがかかっている。
何をするにも他の3人のことを考えている。
一緒にいない方が良いとか、そう言ったことばかり考えているのだろう。
でもそうしなかったのは少しだけ褒められたものだった。
自分の気持ちを尊重する様になったのだから。
今まで自分の気持ちを捻じ曲げ、押し込んできたアリスが。
一緒にいたいという自分の気持ちによってまだぎこちないが。
それでも今も一緒にいる。
彼女の顔がそれを語っていた。
ずっと一緒にいたいと。
…それは僕もだよ、アリス…
この感情がアリスにとってマイナスにしかならない。
一緒にいるためなら。
一生アリスの友達で良い。
でもアリスの友達として。
一緒にいるためには。
やらなければならないことがある。
それは…
彼女を。
闇から救う事。
アリスの為にだけ…なんて嘘はつかない。
リンの為。
マリーの為。
そして自分の為。
ずっと一緒にいられる様に。
彼女の笑顔を曇らせない様に。
絶対に。
彼女を闇から助ける。