コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.303 )
- 日時: 2016/07/30 21:35
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
部屋に戻るとシャワーしてマリーセレクトの寝間着に着換える。
今日はもう予定は無い。
明日のスキーを控えてあえて何も入っていないのだ。
部屋の風呂を浴びて障子を開けると、マリーに髪を乾かせと叫ばれた。
長い髪を乾かしきると、エリスが部屋に飛び込んできた。
「これから急遽、カラオケ大会するって!」
どうやらエリスがやってみたかったみたいでどうにかねじ込んだらしい。
ItemMemberのことを知っていたせいでもあるとは思う。
クラス1人ずつ歌を聞いていると段々眠気が襲ってきた。
上手ければ他人の歌を聞くことに退屈を感じることは無い。
けれどこう何時間も、しかも知らない曲を歌われると少し眠い。
エリスは慣れているのか全く眠そうなそぶりを見せなかった。
流石プロ。
「あと歌ってないのは…三田村さん!!」
眠い頭にその声は鮮明に聞こえた。
「…えっ!?」
面白そう、と言った視線が私を突きさす。
「…お、お断りします!!」
断るだけでも体力を使う。
人に慣れていないことに私は心底憎んだ。
けれど一笑された。
「じゃあ、他の人と一緒でもいいですよ!」
実際に司会に悪意はないだろうけど、その顔に私は悪意しか感じなかった。
「そ、それでも…その…遠慮しておきます!!」
精一杯頑張って断った私の努力を全否定する様にマリーが私の腕を掴んだ。
「行きますよ、アリス。」
「ちょっ、マリー!?」
軽音部メンバーにエリスもサリーを引っ張って前に出てきた。
前に引きずり出されてから、パジャマできたことを後悔した。
「マイクは1本で良いです。」
何故かピアノもあるし、簡易ドラムセットも設置されていた。
「サリー、ItemMemberの曲弾ける?」
「弾けます。」
個人的にItemMemberが好きらしい。
「ItemMemberのメドレーでいいですか?」
私は頷いてないのに何時に間にか始まっていた。
人前でステージとかやったことはあるがこう言う風にやったことは無い。
♪-♪-
歌は相変わらず好きだ。
歌うと何もかも忘れられる。
歌があったから、皆に会えた。
でももし歌っていなければ。
あの場所に留まらず、もう3人のことを忘れて父の元に戻っていた。
そっちの方がある意味で幸せだったかもしれない。
でも私は会いたかった。
1目でもと、私は願った。
初めてだったから。
特別な存在だったから。
だから会いたかった。
お別れなんてしたくない。
何時かは来る別れ。
その時3人はきっと引き止める。
そんなのが無駄だってことも分かっている。
でも今度は…ちゃんとお別れを言えたらいいな。
♪-♪-
歌い終えると大きな拍手が包み込んだ。
この拍手も…あと何度聴けるのだろうか。
愛しくなる。
拍手は好きだ。
認めてもらった様だし、歓迎されているような気がするから。
誰かと関わろうとすると何時も別れのことばかり考えてしまう。
ある日突然いなくなるって覚悟しといたほうがずっとマシだ。
気を抜いてしまうと忘れてしまいそうだ。
何時までも一緒にいられるって思ってしまう。
眠い…
ガッと腕を掴まれ体を支えられる。
「…エリス?」
「こいつ、こう言うの慣れてないものだから!もう疲れちゃったみたいで、失礼しま〜す…」
引きずられる様に客席まで戻される。
積み上がっていた座布団を枕にして横になる。
「全く…クリスマスの件まで後引いてるのに無茶し過ぎ。」
「あれから体に不調は無かったんだけど…」
時々急に来ることがある。
それに外にも慣れていないので遠出に疲れたのも事実だ。
遠出しただけでこんなに疲れるなんて…
やっぱり圭達と同じ世界に立つのはまだ先になりそうだ。
「でもスキーが楽しみだって言うのも本当なんだ…」
薬で体はボロボロになっている。
きっと色んなところでガタが来ている。
「こっちの世界に来るには…お互いまだ先になりそうだね…」
エリスも連れ回されているんだ。
睡眠時間だって多くは無いだろうし、激務だ。
逃げないように色々薬漬けではあるのだろう。
体が弱い方が役立つ時もある。
相手に付け入る時に体が弱いふりをしたりするためだ。
なんでこんな風に生きなきゃいけないんだろう…
そう思ったのは…圭達に会ってからだった。