コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.326 )
- 日時: 2014/04/15 18:30
- 名前: 雪 (ID: /8RPd6Ii)
アリスはいつもと同じ無表情だった。
それで勇気を出して声をかけたんだ。
「あのさ、アリス…聞きたいことがあるんだけど…」
私がアリスに向かって声をかけるのはここを訪れたその日以来であった。
彼女は相変わらず本から顔を挙げなかった。
「アリスに言ったかな。私はあなたとパートナー!私は表向きに活躍してあなた裏で真実をはじき出す。
パートナーとして、あなたに聞きたいことがあるの。」
何時もならズバッとものが言えるのに…今は無駄に遠まわりしている。
「あなたは…自分の生き方についてどう思ってる?」
言いきってからは少し落ち着いた。
「他の子と違ってずっとこんな塔にいるし、本ばかり読んでいて存在すらも世間に隠されている。
アニエスの為の道具として汚れ役を背負わされたそんな人生をあなたはどう思っているの?」
彼女はいつも通り興味を示さず、黙り込んだままだった。
でもそれだけは確かめておきたかった。
私と同じ、パートナーであるアリスが自分の人生をどう思っているか。
日が沈んでも私は粘り続けた。
それを気味悪く思ったのかようやく彼女は口を聞いた。
「…興味が無い。」
決定的だった。
彼女は自分の人生に何の疑問も抱かず、死を当然のことと受け入れていた。
頭が良い彼女のことだ。
自分がどうしてここにいるのかなど察しはついているのだろう。
けれど彼女はそうか、と納得して毎日牢から1歩も出ずに本を読んでいるのだ。
なんだかそれが私に重なったのだろう。
「そうか…お前は確かに優秀かもしれないが人間として大事な何かを失っている。」
キッと睨みつけても彼女は全く顔色を変えなかった。
それっきり私は彼女のことが嫌いになった。
彼女が牢から出て来れた時も彼女は何も変わっていなかった。
表情もなく、自分の運命に抗いもせず淡々と受け入れていた。
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「まぁ、だから彼女に技を教えると称して技をかけまくったり…馬鹿なことをしたものだよ。」
ふぅ、と小さく息を吐く。
「っで、マリー達はいつまで聞いているのかい?」
すぐ後ろの席に座っている女性客の肩が震えた。
圭もマリーから事情を聞いたんだな。
「だからこっちに来てとても驚いた。守るべきものを見つけ、表情もまるで別人の様に変わっていた。
なにより彼女は生きようとあがいていた。だから私は驚いた。」
どうやらそれにはお前ら3人が関係あると思ったのだが…スキースクールの様子を見るとその通りの様だ。
あのアリスが笑うところすら想像できなかったのに彼女の想いを引きだした。
彼女があんなに子どもの様に泣く姿を10年前の私には想像できなかった。
けれど引き出しただけ終わらないように祈るだけだ。