コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 秘密 ( No.334 )
日時: 2014/04/22 22:31
名前: 雪 (ID: HTruCSoB)

♪-♪-

ジャジャーンとギターを鳴らすと控え目な拍手が私を迎えた。

「お疲れです、アリス。ようやく弾けるようになりましたか。」

「ご生憎、マリーの様に幼少期から楽器をやっている訳ではないので。」

♪-♪-

歌うのは気持ちいいし、好きだ。

6年間歌い続けてきた意味がある。

♪-♪-

「『ベストフレンズ』…ですわね。」

♪-♪-…

「全く…よく毎日歌えますね。」

「あら、マリーはそうじゃなくて?」

6年間も歌ってきた。

歌うためだけに生きてきた。

あいつ等の隣に並ぶ為に。

ようやく肩をならべられたんだ。

「エリスの方はどうだ?」

「順調ですわ。」

マリーの視線の先にはスタジオで1人ドラムと格闘するエリス。

「素人とは思えないくらいです。」

「そうか。」

あいつ自身も楽しんでいる様でよかった。

「…あいつはさ、親を知らないんだ。」

兄弟も親友もいない。

子供っぽい口調から垣間見る大人っぽさはそうでなければ生き抜けなかったから。

強く賢く大人たちと肩を並べなければ…

「だから似た境遇の私を憎んだり、共感したりってさ。姉妹…みたいに思ってるんだと思う。
私はあんな生意気な姉も妹もいらないけど。」

それでも裏の世界で肩を並べられるのはきっとエリスだけ。

2人で闇から抜け出すと決めたのだ。

「…いいですね、そういう気のおけない相手が傍にいるって言うのは。」

優しく微笑みながらマリーは少し悲しそうに見えた。

影が…差した様に見えた。

「あっ、そういえば…」

影が消えた。

けれど気のせいではない。

マリーには家族の話も兄弟の話もあまりしてはいけない。

以前、マリーの父ともめた。

あれで少しは緩和されたのだろうが、今では兄弟といった類のワードに敏感に反応する。

…想像はつく。

けれど私に何が出来るというのだろうか。

彼女は1人っ子だ。

…今は。

「今日、女子だけで集めたのには理由がありまして…2月に差し掛かったこの季節!!
女子に待ち受けるビックイベント!1年に1度女子が勇気を出すことが許される日!それは…」

嫌な予感がする。

もったいぶるように数秒ためると大きな声で宣言した。

「バレンタインです!!」